中国の研究者 灌漑用水の変化傾向と経済への影響を解析

2024-03-11 14:57:34  CRI

 中国科学院空天信息創新(航空宇宙情報イノベーション)研究院によると、同院リモートセンシング科学国家重点実験室の王樹東研究員が率いる生態水文リモートセンシングチームがこのほど、灌漑用水推定分野で重要な進展を遂げました。同チームは機械学習とリモートセンシング観測データに基づく中国全国規模の灌漑用水量推定モデルを提案し、さらに同モデルに基づいて将来の気候変動下における中国の灌漑用水の変化傾向と経済への影響を明らかにしました。

 灌漑農地は世界の耕地面積の約20%を占め、40%を超える食糧を生産しています。中国の灌漑農地の面積は世界最大で、全国の耕地面積の半分以上を占めています。灌漑用水は作物の成長と収獲量にとって極めて重要であり、特に水資源が不足している地域では、干ばつの多発と極端な気温による影響が大きく出ます。世界的な気候変動が食糧安全を脅かす度合いが増大し続けていることもあり、水資源の最適な分配政策を策定するための灌漑用水の変化の正確な推定がますます重要になっています。

 従来の灌漑用水の推定方法は有効活用できるデータ量やモデル構造の制約を受けるので、全国規模かつ将来の気候変動に適用する場合も制約が大きくなります。同研究チームはこの状況を踏まえて、機械学習に基づく新しいモデルを開発し、降水、蒸散、土壌水分、積雪水当量の高精度の衛星リモートセンシング情報と気象駆動因子、経済統計データ、数値モデルシミュレーションを統合することにより、データ駆動型フレームワークを構築して全国規模の灌漑用水を推定しました。11カ所の農地においてそれぞれの観測検証を実施した結果、シミュレーションデータと実地観測データには明らかな相関性があることが分かり、新モデルは正確率が90%以上という、灌漑用水の推定における高い精度を実現しました。

 さまざまな温室効果ガス排出状況に基づく研究によれば、今後70年には特に西北地域と華北地域をはじめとして、約6割の省で灌漑用水量が増加する見込みであることが明らかになりました。1980年代から2010年までのデータと比較すると、全国の灌漑用水は2050年までに最大で17.1%増加し、そのことにより毎年の必要経費は最大で39億1000万ドル(約5750億円)増加すると予想されます。さらに2100年までに灌漑用水量は最大で34.8%の増加が予想され、毎年の経費は最大で65億ドル(約9550億円)増加すると見込まれます。同研究結果は水資源の持続可能な利用と管理の緊迫性を改めて明らかにしました。

 この研究には、中国気象科学研究院と米ペンシルベニア大学の協力があります。研究成果はこのほど、米国地球物理学連合(AGU)の発行する学術誌 「アースズ・フューチャー(Earth’s Future、地球の未来)」に掲載されました。(閣、鈴木)

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