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北京龍泉寺に見る伝統と現代(下)

2013-08-09 16:12:59     cri    

 翻訳部では、ロシア語翻訳担当の女性に会いました。大学卒業後、旅行社で10年間ガイドをしていましたが、現在は仕事を辞めて龍泉寺でのボランティア翻訳に専念しています。私たちの心配を見抜いたかのように、「いまはお金を使う場面がほとんどありません。衣食は寺院にまかなってもらっていますし、たまに私用で街中に行く時もこれまでの蓄えがあって、無報酬だからといって何も困ることはありません」と笑っていました。

 ところで、日本語翻訳チームの引率者は、北京生まれで九州大学博士課程修了の翁躍春さんです。無宗教だった翁さんは8年間の福岡滞在で、神社が日本人生活の一部にごく普通 に組み込まれているのに、中国ではそれに値する場所が見当たらないことに気づき、心の安らぎを与えてくれる信仰の大切さに目覚めたといいます。
 2006年にスタートして今年はすでに7年目。きっかけは、帰省した北京で入った精進料理店で手にした龍泉寺のパンフレットでした。会社との契約を打

             翁躍春さん
ち切り、本帰国を決意しました。
 「会社の皆さんには本当に迷惑をおかけしました。しかし、自分はどうしてもボランティアをしたい。仏法を勉強しながら、心身ともに清めたい。そして、中国人と日本人が仏教を通して交流できれば、日本で大変お世話になった人たちへの恩返しにもなる。そう考えて、申し訳ない気持ちを抱きながら、帰国を決めました」
 今の翁さんは大学の非常勤講師をする傍ら、龍泉寺での翻訳ボランティアに携わっています。日本語翻訳チームは5~6人の日本人ボランティアを含めて総勢30人ほどです。主な仕事は寺院の公式サイト、法話、住職のミニブログの翻訳で、2週間に1回寺院に集まって、勉強会も開くということです。
 ちなみに、現在、チームで『空海 黄金の言葉』を読んでいます。「空海の言葉もそうですが、日本語での仏の教えと中国語での仏の教えは実は一緒なんですね」と目を輝かせていました。  
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 高学歴で若い僧侶が多いということが龍泉寺の特徴と言えます。寺が位置する海淀区という、中国で最も多くの大学が密集している土地柄も関係あるかもしれません。ところで、中国では「出家」には戒律の厳守が伴います。肉や卵を一切食べてはならず、自身の家庭 を持つことも許されず、一生、寺院での集団生活をしなければなりません。ちなみに龍泉寺では365日、朝4時起床、9時半消灯を実行しています。とにかく思い切った「断捨離」がないと到底できないことだと言えます。
 話を日本語の流暢な賢屈法師(写真左)に戻します。日本の仙台にある東北大学社会情報科学の博士課程3年の時、3・11東日本大震災に遭遇し、その後2カ月にわたって仙台の海辺でボランティア活動を続けました。  
 「激甚災害に見舞われた時の日本人の強い精神力に触れ、感動しました。自分も宗教に帰依したいとその時決意しました。丁度、その前から仏教に興味を抱き、学誠大和尚の言説に接することもありましたので、今後の人生は仏教の修行に専念していくと決めました」 
 博士号取得後、北京空港でタクシーを拾ってまっすぐ向かったのは龍泉寺の山門でした。その後修行を経て、正式に剃髪得度したのは去年の10月でした。
 83年生まれの一人っ子。明るい性格で、しゃべりだすと日本で見たエンタメ番組の名前も自然と話題に出てくるなど、俗世間の記憶はまだ鮮明なようです。しかし、「自分の命に本当に必要なものは何か」を考えると、未練は全然ないと言います。本人の固い決意とは正反対に、両親からは猛烈な反対がありました。しかし、仏教の教えや出家することの意味を伝え、交流を重ねていくうちに、現在は「安心して受け入れてくれている」。そして、自分の決めた人生に、今は「一度たりとも後悔を感じたことはない」と言います。
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