さて、岩肌がむき出しの鳳凰嶺を麓から眺めると、「仏様の顔に見えるでしょう」と後ろから賢屈法師が大きな岩を差して言いました。
龍泉寺は、僧侶、長期滞在の居士、短期体験者、観光客などが互いに影響されないように、エリアに分けています。次に向かったのは僧侶が修行・生活するエリアで、人の流れがめっきり少ない別天地でした。
「教学棟」と呼ばれるこの建物は山に寄り添って2年前に建てられました。古建築のますがたのデザインが生かされています。廊下をはさんで、斜めに向かいあって「アニメ制作部」と「翻訳センター」の部屋がありました。
アニメ制作部では、スタッフがアニメ制作に没頭していました。小麦をこねてまずキャラクターの人形を作る。それからセットを整えて撮影を始めます。キャラクターが動いているように見せるために、様々な角度からひとコマずつ撮影していきます。アニメの制作で、小麦粉で作った人形を使って撮影しているのは、ここ龍泉寺だけだそうです。ただし、すべてが手作業のため、半端じゃない時間と手間がかかります。17分の作品を作るのに、2、3カ月もかかるそうです。
これまでに2作品が完成し、現在は3作目に取り掛かっています。歴史上の名僧が主人公のシリーズ作で、様々な困難に出くわしても、動揺せずに仏法を広めていくシーンが一つ一つ描かれており、勧善懲悪がテーマです。
ところで、現場でこつこつと作業しているボランティアには、「アニメ制作のプロは実は1人もいない」そうです。20~30人からなるボランティアチームの中に、美術専攻の人は数人いるようでが、かろうじて映像のプロと呼べるのは、出家前に映画の台本作りや演出を担当していた和尚さんだけ。
しかし、出来上がった作品は実に完成度が高く、キャラクターの動きはもちろん、吹き替え、音楽、ストーリー、どれも自然な仕上がりとなっています。お説教っぽい感じはまるでなく、現代人の笑いのツボもしっかり押さえられています。おまけに、ボケ役の小僧さんのしゃべり方はどう聞いても、中国でも大人気のクレヨン新ちゃんを彷彿とさせるものです。
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