私のそばの中年の日本人男性からつぶやきが聞こえてきました。
「ああ、あれは、一番おいしいところですよ。うまそう」
思わず、今後に備えて、こちらも丁寧に教えてもらうようにしました。
「その部分を注文したい場合は、どのメニューになりますか」
「ああ、ナカオチ。"中"に"オチ"と書くと思います。あれ、うまいんですよ」
10分ほど経ったでしょうか。さっきまできょとんとしたうつろな目をして、口もあいていた本マグロは、もう骨格しか残っていません。ハンサム職人は頭だけがそのまま残っている骨の部分を高く持ち上げて、作業が終わりに近づいてきたことを宣言しました。ステージの上には、スーパーの冷凍庫によく並べられている四角い塊がいくつも並べられていました。木の年輪のような、筋が実に美しく、かつ、おいしそうに光っていました。
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