5月の北京、牡丹、芍薬、バラなど様々な花が咲き競い、各公園も花見客で賑わっていました。これらの美しい花の中で、牡丹は豪華な姿と独特の芳香で多くの観光客の目を楽しませます。

　牡丹は中国で昔から「花の中の王者」と呼ばれ、幸福や繁栄のシンボルとされてきました。中国人が牡丹をことのほか愛するのは､やはりその上品さゆえです。「春に咲く花は絵のように美しく、夏の葉は水を打ったように清浄で、秋の枝は鉄のように力強い。また、冬の雪に耐える新芽は梅のようでもある」と、牡丹を称えた詩人もいました。また、中国の文学や芸能の中でも牡丹はしばしば重要な題材として取り上げられました。

　例えば、牡丹について、次のような話が言い伝えられています。唐の時代、中国史上唯一の女帝である則天武后が即位した年の冬、庭園で雪見の宴を催しました。その際、彼女が酒興に乗じ、すべての花に「花を咲かせよ！」と命令しました。花々はそれを逆らうことが出来ず、皆咲き出しましたが、牡丹だけは従いませんでした。則天武后は非常に怒り、牡丹を都から追い出してしまいました。ところが翌年、春風が吹くと、地方に追放された牡丹は競うように花をつけ、ますます美しく咲き誇りました。その後、牡丹は人々に猛威にもめげない花と讃えられました。

　牡丹は昔から高貴、美貌のシンボルとされ、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、美しい女性を牡丹に例えることがしばしばあります。唐代の名詩人・李白と白楽天は中国4大美人の一人・楊貴妃を牡丹に例えたことがあります。これについて次の逸話が伝えられています。

　唐の玄宗皇帝は牡丹が好きなので、牡丹の花盛りの時になると、いつも美しい楊貴妃と一緒に観賞しました。ある日、玄宗皇帝は楊貴妃を伴い花を愛でて、遊宴した時、有名な詩人李白を呼び詩を作らせました。当時、李白は泥酔していましたが、たちどころに三首連作を作り、楊貴妃の美しさを牡丹に例えました。玄宗皇帝はこの詩が気に入り、音楽師に命じて李白の作る詩に合わせて音楽を演奏させ、自分が笛を吹き、楊貴妃を楽しませました。

　今回の中国メロディーは牡丹を特集し、牡丹に関わる伝説と音楽をご紹介しました。番組の中で昆劇「牡丹亭」を取り上げたほか、「牡丹之歌（牡丹の歌）」、「白牡丹（　白い牡丹）」、「平川里紅牡丹（赤い牡丹）」の3曲も紹介しました。

　1曲目　牡丹之歌（牡丹の歌）　　　　

　この唄は1980年に封切られた映画「紅牡丹」の主題歌として爆発的にヒットし、今では映画より主題歌の方が広く知られるようになりました。

　歌詞：

　アー　牡丹の花よ

　百花の中で最も美しい花。

　君を艶やかな花と言う人がいるが、

　艶やかな生命はこんなに豊かに実っているわけがない。

　君を富貴な花と言う人もいるが、

　君が苦楽をなめ尽くしているとは思もよらなかった。

　アー　牡丹の花よ

　春風が吹いてくる時に

　君は麗しい花を地上に咲かす

　2曲目　白牡丹（　白い牡丹）

　この曲は笛の優雅で清らかな音色で牡丹の美しい姿を表現しました。

　3曲目　牡丹亭　（昆劇）

　「牡丹亭」は昆劇の名作です。この劇のストーリーをざっと説明しておこう。

　南安太守の娘・杜麗娘（とれいじょう）は、春のうたたねの夢で柳夢梅（りゅうむばい）という書生と出会います。二人はお互いひと目で恋に落ち、楽しい一時を過ごしましたが、夢の中での恋が忘れられず、書生への思いは日増しに募り、その思いのあまり杜麗娘は病に罹り、はかなくこの世を去ります。しかし夢の書生･柳夢梅は実在していました。幽魂となった麗娘は再び書生と逢い、彼の愛で、息を吹きかえしました。生き返った麗娘は以前と同じように美しく、柳夢梅と幸せな夫婦として結ばれました。

　4曲目　平川里紅牡丹（赤い牡丹）

　この曲は陝西省の民謡です。中国の有名なテノール歌手・胡松華さんが唄ったこの唄はボタンの花を愛しい人に見立てた、非常に美しい抒情歌です。

　この番組へのご意見・ご感想などがございましたら、ぜひお聞かせください。

　宛先

　〒100040　中国国際放送局日本語部「中国メロディー」係　

　メール nihao2180@cri．com．cn