「鉄棒の韓」
いつのことかはっきり分からん。山西の汾陽に韓含竜という男がいた。ここでは韓さんと呼んでおこう。
韓さんは貧乏で住む家もなく、町外れの誰もいない古いお寺に住み込み、日雇いで野良仕事をしてその日その日をしのいでいた。
と、ある夕方、韓さんが疲れた体を引きずり、寺に戻ると、なんと門の前に誰かが倒れている。さっそく抱き起こしてみると、どうもどこかの道士らしく、それに高い熱を出し、体が弱りきっているらしく気を失っていた。そこで韓さんは道士を背負って寺に入り、自分が寝起きしている部屋に寝かせ、境内にある古井戸から汲んだ冷たい水につけた布を道士の額に乗せたりして看病し始めた。すると道士は気がつき、ここはどこだと聞くので韓さんがわけを話すと、道士は安心したのかお礼をいってまた寝てしまった。こうして韓さんは看病を続け、自分の稼いだわずかな金でおかゆなどを作って道士に食べさせたりしたので、道士は二週間後には元気を取り戻し始めた。
ある日、道士が韓さんにいう。
「韓さん。これまで私の面倒をよく見てくれた。本当にありがとう。あんたの恩は忘れない。恩返ししたいのだ」
「いやいや、お礼なんかいらないや。あんたが元気になってくれりゃいいんだよ」
「すまないね。実はわしは今日ここを離れなければならない」
「え?今日いっちゃうの?」
「うん。そこで、あんたへのお礼として私がこれまで蓄えてきたものを貸してあげよう」
「ええ?おいらになにかを貸してくれるって?なんだいそれは?」
「これを飲み込めば、力がつき、いい暮らしができるだろう」
「ほんとうかい?」
「うん。しかし、五十年後にはそれを私の弟子に返してくださいな」
「う、うん、分かった、きっと返すよ」
「いいですかな。あんたが豊かになっても、金を使って悪いことはしなさんな
そんなことをすると、命を縮めますぞ」
「うへ!わかった、わかった」
これを聞いた道士は懐から小麦粉で作った小さな山羊を取り出し、韓さんに口をあけさせ中に入れた。そこで韓さんが歯で噛もうとするとそれはするっと喉を通って胃袋に入ってしまった。これに韓さんが驚いているうちに、道士は韓さんのおでこを軽くつついたので、韓さんは急にめまいがして気を失ってしまったわい。
しばらくして気がついた韓さん、周りを見ると道士の姿はすでになかった。そこで道士の言葉を思い出し外に出て庭においてあった鋤や鍬を手にとると、なんとわらを掴んでいるようにそれが軽い。こうして翌日、韓さんは地主の家で作男として雇ってくれと頼み、自分が力持ちだということを見せるために、近くにあった大きな石を軽々と持ち上げたりした。これを見た地主は、次の日から韓さんを作男として雇った。そして韓さんは働き始め、なんと人の数倍もの野良仕事をやってのけ、また人の数倍もの飯を食った。もちろん、これに地主は大喜び。
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