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宣室誌

2012-05-17 11:51:10     cri    

 「飛蝗」(蚱 蜢)

 晋の孝武帝のとき、皇帝の言葉を書き記したり伝えたりする中書侍郎という役を務めていた徐邈(バク)が、いつのもように仕事場にいた。部下たちがとなりの部屋で仕事をしていて、昼過ぎに窓を開けていると、何かが飛んで入って、奥の屏風のうしろにいき、今度はどうしたことか近くにある大きな壷の中に落ちてしまった。そこで一人の部下が壷の中を見てみると、それは一匹のバッタであった。しかし、その部下は始めてバッタを見たので何かわからない。それに壷の壁に強くぶつかって気を失っているようなので、部下はバッタを指でつまみあげると、なんと両側の羽をもぎ取ってしまい、「なんだ?つまらん」とそのまま壷の中に捨て、ふたをしてしまった。。

 さて、その日の夜、徐邈はおかしな夢を見た。夢の中に娘に化けたというバッタが出てきていう。

 「わたしは遠くからきましたが、あなたの部下に羽をもぎ取られ、また入り込んだ壷のふたをされてどこへも行けなくなりました。どうかしてください」

 次の日、徐邈(バク)は部下たちに言う。

  「昨夜、不思議な夢をみてな。きれいな娘が出てきてわたしにいった。自分ははバッタだが昨日、迷子になってある窓から中にはいり込み、大きな絵の描いた薄い壁の周りを飛んでいると、めまいがしてある壷の中に落ちてしまった。するとお前たち部下がつぼの中から自分をつまみ出し、なんと大事な翼をもぎ取ったあと、また壷の中に封じ込められたので、帰るにも帰れなくなったといって嘆いておった、」

  これを聞いたかの部下が、あわてて壷のふたを開けると、かのバッタが這い上がってきて、なんと一飛びして窓の外へ逃げてしまった。  このときから、徐邈の部下たちはバッタをいじめることはなかったが、かのバッタの二つの羽をもぎ取った部下は、ある日、崖から落ちで大怪我をし、その後はちゃんと歩くことも出来なくなったという。

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