今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、むかしの本「通幽禄」から「哥舒翰」、「広異記」から「死んだはずの県令」、それに「おかしな夢」という三つのお話をご紹介いたしましょう。
はじめは「通幽禄」から「哥舒翰」です。
「哥舒翰」
唐の時代の若い武将哥(か)舒(じょ)翰は新昌に屋敷を構えていた。近くの崇仁里には裴(はい)六娘というきれいな娘が住んでいて哥舒翰は好きでたまらず、そのうちに嫁に迎えることになっていた。しかし、上司の命で見回り役として地方にいき、数ヶ月も都を離れた。そして帰ってきたがなんと愛する裴六娘はその前の日に急な病で死んでいたのだ。これに哥舒翰はひどく悲しみ、その日に裴六娘の家に行くと、亡骸は棺おけに入れてまだ奥の部屋に置いてあった。そこで哥舒翰は一晩だけでも裴六娘のそばにいてやるといい、夜はその部屋に床を敷き泊まることにした。
さて、夜になった。明かりの下に哥舒翰は棺おけのそばで裴六娘に話しかけて涙ぐんだあと、疲れたので床に入り蚊帳を閉めた。そしてうとうとしていると、蚊帳の外で音がしたので頭を上げて見ると、部屋の戸の外から何者かが中に首を入れている。そこで誰だろうと蚊帳を少し開けてみると、戸が開いて誰かが入ってきた。それは背丈が七尺はある夜叉で、獣の皮をまとい、牙を出し髪の毛がばさばさだった。哥舒翰はびっくりしたが声を出さずにいると庭から三人の化け物が入ってきた。そして一人が聞く。
「あの方はもう寝られたのか?」
「ああ、もう眠られたようだ」
ほかの化け物がこう答えると、夜叉ら四人は裴六娘の棺おけを庭に運び、蓋を開けて裴六娘の亡骸を取り出し、月の光の下でなんとその肉や骨を食べ始めたではないか!こうして裴六娘が着ていた衣装はちぎられ散らばり、その血は庭にしたたり流れた。これに哥舒翰はぞっとして気が遠くなりそうになったが、やはり長い間戦で鍛えただけあり、すぐに気を取り戻した。そして六娘の仇を討つためこれら夜叉らを退治しようと思い、跳ね起きて小さな椅子を庭にいる化け物どもめがけて放り投げ、「化け物がでたぞ!」と叫んだ。すると化け物たちは慌てふためき逃げ出したので、哥舒翰は壁にかけてあった剣を手に庭に走り出た。こうして西庭まで追いかけると化け物の一人が壁によじ登るところだったので、哥舒翰は剣で化け物に切りつけた。すると化け物は「ギャー」と叫び、血を流しながら壁を乗り越え逃げてしまった。
と、このとき裴六娘の家の者が騒ぎを聞いて駆けつけた。そこで哥舒翰がことのいきさつを話すと、家の者たちは部屋に入っていった。しかし棺おけはあるといい、ふたを開けて見たが裴六娘の亡骸はちゃんとと横たわっており、動かされた気配はないという。哥舒翰がみるとまさにそのとおりであった。
「あれ?私は夢を見ていたのかな?」と哥舒翰は首を傾げ、屋敷の者は戻っていった。
次の日の夜、哥舒翰の夢に裴六娘が出て来ていう。
「哥さま。あなたさまをお待ちせず、あの世に行ってしまってごめんなさい。あなたさまと夫婦になることをどれだけ望んでいたことか。でも私のそばにいてくださり、仇を討とうとされたのですね。うれしく思います。あなたさまはきっと出世しますわ」
夢から覚めた哥舒翰は首をひねったが、まあ、夢で愛する裴六娘から話しかけられ、自分は幸せだと思った。
それから数年後、哥舒翰は裴六娘が夢で言ったとおり、本当に出世して大将になったわい。
次は「広異記」から「死んだはずの県令」
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