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「宝のたまる鉢」(聚宝盆)

2011-10-13 14:23:35     cri    
 

 ところで、この年はイナゴの害がひどく、麦などはすべて食べられてしまい、多くの人が物乞いに出た。これでは飢え死にする人が出ると華良夫婦は餡なしの饅頭を作り、人々にやった。つまり、一つの饅頭を鉢に入れて饅頭を増やし、それを繰り返して困っている人に配るのだ。また華良は二人の息子に手伝わせ、家の前に台を置き、饅頭を配りながら、これは福の神の恵みだとみんなに伝えるよう頼んだ。おかげで多くの人が饅頭をもらいに来た。それに熱々の饅頭を手にし梁花に涙を流して感謝した。こうして潘村街で飢え死にした人は出なかった。そこで人々は華良夫婦は福の神の使いだといい始めた。これは当然だが、特に金持ちたちはこんな飢饉の年に華良夫婦はあれだけ多くの饅頭をどこから手に入れたのかと首を傾げ、また饅頭作るために薪を燃やした煙も、華良の家の屋根の煙突から出ていないのに気づいていた。もちろん隣近所も同じようなことを華良に聞く。これに華良は「うちの女房は賢いからなんとかうまくやってるよ」と答え、当の梁花も何とか答えてごまかした。

 さて、かの質屋の主だが、どうもおかしいので自分で確かめようと、この日は華良が店の用事で出かけたのを見て華良の家を訪ねた。

 「奥さんよ、今年は厄年で、お前さんの家も働いて食っているのに、みんなを助けてたいへんだなあ。これじゃあ蓄えもなくなっただろう。さ、これは今年の華良さんの稼ぐ金だ。まだ早いが渡しておくよ」

 こういって懐から金を出して卓に置き、部屋の中を見回した。すると小麦粉の入った袋も積んでないし、大きな蒸篭もみつからない。不思議に思った質屋の主、じゃあこれでと言い残し外へ出てから、この華良の妻はまさにすごい、小麦粉も蒸篭もないのに、あんなに多くの饅頭を作ったとはまさに福の神の使いだとつくづく思った。

 こうして華良夫婦のことは広く知られるようになり、飢饉が過ぎても梁花の手打ち麺は毎日売り切れた。つまり梁花は、一日にかの鉢いっぱいになった小麦粉の分だけ麺を打って売り、暮らしに使わなくてすむ稼いだお金は貯めておき、それが多くなると人々のために使った。

 こうして十数年が過ぎた。華良と梁花も歳をとり、三人の息子は嫁をもらい、それぞれ両親の近くに住み、長男の華竜は飯屋を開き、三男の華豹は布を売り、次男の華虎だけが畑仕事で暮らしていた。もちろん、息子たちだけでなく、ここら一帯の人々は梁花を敬っていたので、三人の嫁もこの姑を大事にしていた。で、一家の飯は相変わらず一緒にとり、台所には三人の嫁が順番に入り、一応は何事もなく暮らしていた。

 と、ある年の夏、梁花が病に倒れ、話すこともできない。これは大変。それまでこの家のことを取り仕切って来た梁花がこうなっては一家はどうにもならない。夫の華良はずっと妻の言うとおりに暮らしてきたのだ。当の梁花が心配したのは、かの宝のたまる鉢の始末であった。自分が死に、何とか暮らしていける三人の息子と嫁が欲を出して鉢を変に使えば、災いを招くかもしれないのだ。

 そこで考えた挙句、長男の華竜を枕元に呼び、手まねしてかの鉢を土の中に埋めるようさとした。

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