清の時代の怪異小説集「聊斎志異」から「土地の神となった六郎」をご紹介しましょう。
「土地の神となった六郎」
あれはいつのことだったか?山東を流れるのシ川の北岸に、歳は30前後の許さんという漁師がいた。許さんは毎晩川辺の半小屋で酒を飲みながら、網を張って魚を獲っていた。それに彼は、まず杯に酒を注ぎ、それを川にまいておいてから「この川で溺れ死んだ人々よ。この酒を飲んでくれ」と呪いのように言ってから自分は飲み始める。、ここら一帯で漁をしているものはいるが、どうしたことか、許さんの網にかかる魚はほかの漁師のよりいくらか多いという。
と、ある晩のこと、許さんが川に網を張っておき、いつものように酒を川にまいてから飲み始めていると、一人の若者がやってきて、許さんの周りをうろうろしている。肝っ玉が太いが人のよい許さん、こんな夜中にと不審に思ったが、それより酒の相手がいればこれに越したことはないと若者に声をかけた。
「そこの若いの。うろうろしなさんな。ここに来てわしの酒の相手をしてくれんかね」
これを聞いた若者、「これはどうも」と挨拶して許さんの半小屋に入ると一緒に飲みだした。しかし、おかしなことに、それからは、魚は一匹も網にかからない。これに困った顔した許さんをみて、それまで静かに酒を飲んでいた若者が立って言い出す。
「どうでしょう。私が川に入って魚をこちらに追ってきましょう」
「え?なにをいっとるんだね?」
「すぐに戻りますから」
こういうと若者はたって半小屋を出て行った。
許さんは杯を手に、飲むことを忘れ、暫くは一体何のことかわからんという顔をしていると、かの若者が帰ってきていう。
「魚がこちらに来ますよ。網を引いてください」
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