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石になった牛

2011-08-25 12:05:07     cri    

 農民のほうは何も知らないので、その場に来てびっくりした。地面に獣の毛が散らばっているので、それが狼だとわかり、また、ロバが自分を助けるため、狼と戦ったのだと思った。そこでロバに近寄り、首を抱いて頭をなでた。

 「ロバよ。ありがとうよ。お前がわしを狼から救ってくれたのだな」

 これにロバは有頂天になって鳴く。そのとき、牛は背中の傷を癒やすため、近くの川に浸かった後のそのそと上がってきた。これを見た農民は牛をにらみ、「それに比べ、お前はあまり役に立たんな」とつぶやく。しかし、牛は黙って草をまた食べ始めた。 

 やがて秋になった。ある日、農民は獲れた穀物をいくつかの袋に入れてそれを町に売りにいき、途中で一袋道端に落とした。しかしそれには気づかずいってしまった。やがてその日は放し飼いなので勝手に草原に遊びに行っていた牛が飼い小屋に戻る道で、この穀物の入った袋を見つけ、それを口でくわえれ背中にほうり乗せ、のそのそと歩いていると、ロバが出て来ていう。

 「おいおい。牛さんよ。重そうで疲れただろう。まあまあ、俺がその袋を背負ってやるよ。あんた休みな」

 これを聞いて牛は黙ったまま袋をロバに背負わせた。するとロバはそのまま急いで飼い小屋に走りかえる。そのときは農民は町から帰っていてこれを見て喜ぶ。

 「おお!どうりで袋が一つ足りないと思っていたら、どうも途中で落としたらしい。それにしてもお前ロバというやつは、いつも感心するな。それに比べ牛はなんだ?」

 ということになり、それから農民は、ロバには餌としてとうもろこしや大豆を与え、牛には草やとうもろこしの茎などしか食べさせなくなった。

 こうして翌年の春が来た。ある日、農民は飲馬河を渡って綿を買いに行くことになり、牛はあまり役立たないという考えがあるので、この日はロバに車を引かせ出かけた。そして川辺に来てみると、なんと数日続いた雨で飲馬河の川水が増えて渡りにくくなっていた。そこで農民は車を引いているロバに鞭を当て、浅いところに移り河を渡ろうとした。

 こちらロバは川の水が増え、流れが激しくなったのを見て怖気づいていたので、鞭で打たれてあわてだし、ひっくり返りそうになった。おかげで車が少し傾き、農民は河に落ちそうになった。

 「ああ!こら、危ないじゃないか!それ、向こうの浅いところに移れ!」と農民がまた鞭を当てると、ロバは怖さのあまり、まったく動転してしまい、これでは溺れ死ぬとおもい、もがき始めた。これに驚いた農民は、言うことを聞かないロバを叱り付け、力いっぱい鞭で打ったので、ロバは飛び上がってしまい、そのはずみで車が横になり、農民とロバは強い流れに呑まれ、しばらくもがいていたが、とうとうみえなくなってしまった。

 で、牛のほうだが、いつまでたっても主の農民だけでなく、ロバまでが帰ってこないので、翌日、飲馬河のほとりで農民をまった。しかし帰ってこない。そこで牛はその次の日も農民の帰りを待ち、なんとそのときから毎日河のほとりにいっては横になって主の帰りを待った。こうして月日が過ぎ、牛はなんと石となってしまったという。

 次のお話しは浙江省に伝わる「金の牛」です

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