今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、清代のお話「金の杯」をご紹介いたしましょう。では参りましょう。「金の杯」です。
「金の杯」
いつのことかはっきりわからん。歴城という町の郊外に、むかし役人が住んだという古屋敷があった。それは大きく、幾つのも庭があり、建物も多く、造りはかなり凝っていたが、屋敷でおかしなことが起きるというので、すんでいた家族は恐ろしがって引っ越し、あとは誰も寄り付かない気味の悪い無人屋敷となり、庭は荒れ放題で、部屋の中は埃やクモの巣だらけだったという。
ところで歴城に殷公という書生がいた。ある日、殷公は何人かの友だちと酒を飲んでいた。そして酒が回り始めたのか、話がおかしくなり、そのうちに気味悪いものは何だといい始めた。で、殷公はあまりしゃべらず、ニヤニヤして酒を口に運び、人の話を聞いてはうなずいたり、首を横に振ったりしていた。しかし酒につよい殷公はかなり飲んでいる。
そして話がかの古屋敷に移り、そのうちにその場にいる一人が、この古屋敷で寝泊りする勇気のあるものはいるか?と聞く。これに誰一人として自分が行くと答えるものはいない。そこで、いつもふざける男が、これまで黙って酒を飲んでいる殷公にいう。
「おう!そこの気取り屋さん。あんたこの話を聞いて怖くて何も言えんのではないか?」
これに殷公のことをよくしている男が答えた。
「おいおい!変なこと言うな。黙っているからって、怖がっているとはいえないぞ。そういうお前は、怖さを紛らわすため、人をからかっているのか?」
「冗談じゃない。俺は怖くわないが、奴さん、今日はあまりにもしゃべらないから、聞いてみただけさ」
これに殷公はしばらく黙ったあと、「面白い話だな」という。
「うん?殷さんよ、あんた行く気があるのかえ?」
「いや、気が進まんが、いってみてもいいと思っているだけだ」
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