「鳥の会話」
浙江の招信という町に孔一という医者がいた。孔一は医術が高く評判がいいので、病にかかると、地元だけでなく、近くの県の人たちまでが孔一の元にきた。特に孔一は足の怪我を治すのが得意であった。で。彼は面白いことに金持ちからは金を取るが、貧しい人たちには、どんなにひどい怪我を治しても一銭も取らなかったばかりか、小銭を与えたりした。
と、ある日。孔一が往診から帰る途中、ある鳴き声が気になり、足を止めると、一人の狩人が道端でその日の得物を売っていて、売られているのは一羽の雁だった、雁は翼をやられたのか、痛そうに鳴き涙まで流していた。そこで孔一が近寄ると、狩人は怪我を治したことのある人で、相手は孔一を見て、笑顔でいう。
「これは、これは、先生。このまえは右足を治してくれてありがとうよ。そうだ、この雁はさけ谷間で捕らえたばかりだ。どうだい。こんなこと言っちゃなんだが、この前の治療代の代わりに持ってかえってくんなよ。この雁は肥えていてきっと美味いよ。酒の肴に丁度いいぜ」
「いやいや、わたしがその雁を買おう」
「冗談じゃない。先生よ、頼むから雁を持って帰ってくださいよ。おいらはこれで帰るから」
といい残すと、狩人は雁を孔一に渡してどこか行ってしまった。そこで孔一は雁を家に持ち帰り、怪我した右の翼を丁寧に治してやった。幸い骨は折れていなかったので数日後に雁はえさを食べ始め、七日後には元気になった。そこでしばらくしてから放してやろうと思って、買ってきた大豆を与えて言った。
「雁よ。お前は今度から気をつけろ。狩人がいそうなところへはいくんじゃないぞ」
孔一がこうぶつぶつ言っていると雁はどうしたことか、また涙を流し始めた。
「うん?翼はもうよくなったぞ?痛むわけがないのにどうしたんだ?それとも飛べないのか?」
これがわかったのか雁は首を横に振り、急にくちばしで翼から一本の羽毛を引き抜き、孔一の手の上に置いた。
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