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博打の神

2011-06-02 14:09:10     cri    




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 今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。

 今日のこの時間は清の時代のお話「博打の神」、「狩人と象」、それに「大魚のお礼」をご紹介しましょう。始めは「博打の神」です。

 明の万暦年間に孫万勝という男がいた。孫万勝は家業を継ぎ地元の湖州では指折りの金持ちだった。しかし、孫万勝は少年のころから博打が好きで、父が生きていたころは、よく叱られたので賭場に行くのは少なかったが、父が死ぬと、商いのほうはいい加減にし、常に賭場に足を運んだ。こうして半年もたたないうちに父が残してくれた財産をほとんどなくした。

 この日、孫万勝は人と大金を賭けてまた負けてしまい、これでは家族や店のもの会わす顔がないと困った。そこで一人で郊外に向かった。どれだけ歩いただろう。やがて荒れ野原に来た孫万勝は不意に疲れがどっと出てきて、土手の上に倒れ寝てしまい、グーグーといびきをかき始めた。

 孫万勝は夢をみた。それはいつものように賭場にきたのだが、賭ける金がないので黙っていると、あるじいさんが孫万勝をみて、「わしの賭け方をみていなさい」という。そこで孫万勝はそのじいさんの横に座らせてもらい、目を凝らしていた。

 すると、このじいさんは見事に勝ちっぱなし。しばらくしてかなりの金が入った。もちろん、これを見ていた孫万勝は、自分もこのじいさんのようになったらなあ、それにいったいどうして勝ったのか教えてもらいたいと思った。こちらじいさん、この孫万勝の考えを見抜いたように、「さ、これぐらいにしておこう」というと、横にいる孫万勝の肩を叩き、席を離れると、自分についてくるように孫万勝に手招きする。そこで孫万勝が隣の部屋まで付いていった。じいさんがいう。

 「わしが賭け方を少し教えてやろう」

 「え?ほんとかね?」

 「ああ。あんたこれまで負けっぱなしだったんだろう」

 「そうなんですよ。じいさん、お願いしますよ」

 こうしてじいさんは小さな声で話し始めた。しばらくして明るい顔でその部屋から出てきた孫万勝は、さっそく、賭場の頭から金を借りようとした、しかし、頭は孫万勝を見て怒鳴った。

 「孫さんよ!ここはあんたには用はないんだ!金は貸してもいいが、他のところで賭けな!いいかい、金を貸すからそれで負けた金を勝ち戻したら、博打なぞやるんじゃねえ!」

 これに孫万勝はびっくり。そして目が覚めた。

 「何だ、夢だったのか。それにしても賭場の頭もいおかしいよ。俺は金をくれと言ったんじゃない。貸してくれといったんだぜ。それなのになんだよ。お説教しなくてもいいじゃないか。ふん!うん?うんそうだ。夢の中でじいさんが教えてくれた博打の勝ち方。おぼえてるよ。なかなかいいぜ!よし」

 と、孫万勝は、その日はもう遅くなったので、町外れの古いお寺に一晩泊めてもらい、翌朝出かけた。そう、友だちから金を借りて、負けた金を取り戻そうというのだ。孫万勝は幼馴染の家に来て、少しの金を借りると、その足で賭場に向かった。

 こうして孫万勝は、借りた金を基に、じいさんの言ったことを思い出しながら賭場に居座り続け、数日のうちにこれまで負けた金を取り戻した。もちろん孫万勝は得意になり、かの夢の中で賭場の頭がいったことなど、とっくに忘れ、商いはほったらかしで、毎日賭場にかよった。で、金は増える一方で、彼の財産は前の数倍にも増え、博打のほうは地元湖州では彼に勝てる相手はいなくなった。そこで孫万勝は、旅に出て自分と勝負できる相手を探すことにした。

 ところが、その前の日に「迷竜」というあだ名をもつ男がこの町へ来て、博打の相手がなくなったという孫万勝と勝負したいと果たし状みたいなものを、孫万勝が出かける前に使いを遣って届けてきたのだ。

 「なに?『迷竜』だと?ふん、面白い。相手になろうじゃないか」と孫万勝は、さっそく約束の時間にその場に赴いた。みると、相手は年寄りで、あだ名の「迷竜」とは、かけ離れた身なりをしていた。

 「ふん、いまにみていろ」と孫万勝は賭け始めたが、なんと半日もしないうちに孫万勝はすべて負けてしまった。負けるとは思っていなかった孫万勝が、こんどは店を抵当に賭け続けいたといったところ、その「迷竜」という年寄りは、「今日はこれまで!」と言い残し、その場をさっていく。これを見た孫万勝はやっと我に帰り、「上には上があるものだ」とさとり、あわてて「迷竜」のあとを追った。そして追いつき、その場に跪くと「お願いでございます。弟子にしてください」と叫んだ。

 これを見て「迷竜」は笑った。

 「はっはっはは!思った通り追いかけてきたか」

 「ええ?どうして俺が追いかけてくることがわかったのですか?」

 「ふん。おまえも物忘れが早いな!」

 「え?物忘れが早い?」

 「あたりまえじゃ!この前、お前が負けてすっからかんになり、家族に会わす顔がないと家に帰らず郊外の荒れ野原で寝てしまい、そのとき見た夢を忘れたのか!」

 「ええ?ああ・・。思い出した。思い出しました」

 「思い出したか!ばかものめ。夢の中で博打に勝つ方法をお前に教えたのがこのわしじゃ!」

 「ええ?ではあなたさまが、夢の中のあのじいさんですか?」

 「そうじゃ。お前はわしが誰かしっておるのか?」

 「いえ?ただ、あなたは・・」

 「わからんじゃろう」

 「は、はい。わかりません」

 「ふん、わしはあの世の博打の神じゃ」

 「あの世の博打の神、神さま?あの世にそんな神さま、が?」

 「ああ、そうじゃ!この前、お前の死んだ父が残した財産をほとんど賭博でなくしてしまったな」

 「は、はい」

 「これを知ったお前の父は、かなり悲しんだあと、わしのところに来て、博打でどのようにして勝つかを少しでもいいから息子の孫万勝に教えてくれと頼みにきた。実はわしはお前みたいな、家族のことを顧みず、自分の楽しみだけを考えている人間は嫌いでのう」

 「ええ。そんな・・」

 「わしのいったことはうそではない。お前はそのような人間だ」

 「は、はい」

 「そうであろう。で、わしはお前の父の頼みを断った。しかし、それでもお前の父はあきらめず、どうしても頼むという。わしは改めて断ったのだが、お前の父は怒ってしまい、その場で賭博の神であるわしと勝負すると言い出しおってな」

 「ええ?親父が?」

 「そうじゃ。これにわしも驚いてなあ。これは面白い。この博打の神に勝負を挑むとはいい度胸だと、さっそく勝負を始めた。しかし、どうしたことか、お前の父の気持ちが天に届いたのか、なんと、その勝負はわしの負けじゃった!」

 「ええ?そんな馬鹿な。親父は死ぬまで博打なんかしたことはありませんよ」

 「うん。わしも調べたがそうであった。しかし、このわしが負けたのじゃから仕方あるまい。そこでわしはお前の夢に入って博打の勝ち方を少し教えたのじゃ」

 「そうでしたか」

 「そしてお前は、人から金を借り、それをもとに、それまで負けた金を取り返しただけでなく、お前の父の残した財産を大きく増やした。しかし、賭け事は少しもやめず、まじめに商いをせずにだ!これにお前の父は悲しんだぞ」

 「ええ?」

 「これでは、お前はだめになってしまうとな。そこでわしがこうしてここに来てお前を懲らしめたのじゃ。しかし、お前は負けても、またも店を抵当にして最後の勝負をやるつもりでいるな」

 「は、はい」

 「ばかもん!もし、お前がこれ以上負ければ、家族は路頭に迷うことになるのじゃぞ!お前はどうしてそんなに自分の楽しみだけが頭にあるのじゃ」

 「そんな・・」

 「いいか、これ以上馬鹿な真似をすると、お前の父がもう我慢ならぬと、閻魔さまに頼んでお前の命を縮めてもらいにいくぞ」

 「そ、そんな。それは本当ですか?」

 「わしはうそはいわん。いいか、今日わしが勝った金は罰金としてもらっておき、貧しい人々に配る」

 「わ、わかりました」

 「よいな。これはから博打はやめて、お前の父のように商いに励め。でないと、お前の命は縮むぞ!」

 「迷竜」のじいさん、つまり、あの世の博打の神は、こういい残してふと消えてしまったわい。

 こちら孫万勝は、その場にしゃがみこみ、長い間立たなかった。そして暗くなってからとぼとぼと家に帰り、そのときから彼は博打とは手を切り、父のように商いに励んだと。うん!

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