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「螻蛄の恩返し」

2011-03-03 12:08:09     cri    

 こうしてイボウは、いくらか恐がっている李格をなだめ、屋敷に入って寝床を見つけ、酒や食い物を出してきて応接間で夕餉を済ました。そのあとなおもここは気味が悪いと怖がる李格を奥の部屋に泊まらせ、自分はなんと応接間に床を敷き、また酒を持ち出し、明かりを消して弓矢をそばに置き、酒をなめていた。

 こうして夜半まで飲んでいたイボウは眠くなったので横になり、うとうとしていると、不意に外で光るものが空から飛んで庭に落ち、応接間の門の外を明るく照らした。これに気がついたイボウは眠けが飛んだ。

 「ははーん!屋敷の主が言うのはこれかな?おもしろい」と徳利の酒を一気に飲み干し、弓矢を手にして応接間の戸のところに近寄り、少しあけて外を見た。すると庭では怖い顔をした化け物が目玉をぎょろぎょろさせ、こっちに向かっている。

 「今だ!」とイボウは矢を弓に掛け、力いっぱい引っ張って化け物めがけて三本続けて放ったところ、矢はいずれも化け物の急所らしきところに当たり、化け物は「ぎゃー!」という声を残してその場にぶっ倒れ、光はすぐ消えた。この悲鳴に李格が起きだし、奥の部屋から出てきたが、怖がって震えうずくまってしまった。 

こちらイボウ、矢に当たった化け物が動かなくなったのを見て、庭に出で化け物に近づき、供の李格を呼び、明かりを庭に持ってくるよう言いつけた。まもなく明かりが来たので、照らして見ると大きな肉の塊が転がっていた。そこで肉の塊に刺さっている矢を引き抜いたが、こちら李格はこれを見てびっくり。

 「だんな様。こ、これはいったいなんでございましょう?」

 「ほほ?そうだな。これはなんだ?食えるのかな?そういえば腹が減ってきたな?」

 これに李格は主が何でもかんでも食べてしまうのを思い出し、いやな予感がした。

 「だんな様。なんです?これをもしかして・・」

 「ああ。そのもしかしてじゃ!」

 「そんな、気持ち悪い」

 「なにをいう!いくら化け物でも、こうして肉であれば焼いたり煮たりすれば食べられるというもの。お前はこの肉を台所にもって行き、味をつけて煮てみろ。きっとうまいぞ!それにしてもこの屋敷の主の言ったことは本当だったな。案の定、変な化け物が出やがった。でも、弓矢で殺すと、食えそうな肉になるとは思わなかったワイ。幸いじゃ!」

 李格はこれを聞き呆れ返ったが、主には逆らえないので、仕方なく台所から包丁を持ってくると、イボウはそれをとり、肉の柔らかそうなところを切り取り、李格にそれを台所に持って行かせた。そしてイボウは応接間に戻って明かりをつけ。また酒を飲みながら待っていると、李格が味付けして煮上がった肉を皿にのせ運んできた。

 「ほうほう。いい匂いがするな」とイボウは箸をもつ。もちろん、李格は横でそれを見ているだけ。

 「うん、うん。これはいける。おい、李格、お前も一口食べてみろ、なかなかいけるぞ」

 「と、と、とんでもございません。私は遠慮いたします」

 「なんだ?つまらんやつだ」とイボウは、酒を飲みながら、煮た肉をきれいに平らげ、そのあとは寝てしまった。

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