次のお話は。「太平広記」という書物から「化け物の肉」です。
「化け物の肉」
唐の大暦年間にイボウという男がいて大きな体に力持ち。それに幼いときから怖いもの知らずで、とりわけイボウは弓術、つまり弓矢が得意で、狩りのときだけでなく、出かけるとき弓矢を必ず持っていく。それに獲物であれば煮たり焼いたりして酒の肴にし、また地べたを這う生き物なら蛇、さそり、ミミズ、かまきり、アリなど、何でも口にする。
ある日、イボウは下男の李格を連れ都の長安の近くに来たが、そのときはもう夜で、仕方がないので郊外のどこかで一晩泊めてもらおう馬を走らせた。そしてやっと町外れにある屋敷に着いたが、そのとき、この家の人々が出てきて、一人の若者が表玄関を閉めようとしていた。そこでイボウは近寄り、そばに立っていたその家の主らしい男に、遠いところからきて、いまは疲れているので一晩泊めてくれと願い出た。これにその主らしい男が怪訝な顔をした。
「どなたか知らんが、あんた方はうちに泊まりたいのかね?」
「もちろん、一晩だけでいいから泊めてもらえんか?」
「どうせわしらは町中にある親戚の家に行って、一晩泊めてもらおうと思っていたところ」
「え?」
「実は、隣の家の人が死んだので、その亡霊が化け物となって今夜にも来るかも知れんとおもってな」
「それはあまりにも・・」
「いやいや。先月おかしなことがあってな。その家で人が死に、夜に隣に化け物が出て大変だったという」
「え?本当でござるか?」
「うそじゃない。大の大人がうわさだけで怖がるものですか」
「へえ!それはそれは。では一晩是非泊めてください」
「え?あんたも面白い人だなあ。敢えてうちに泊まるのかね?」
「ええ!化け物が出るといわれたが、そういうのが私は好みましてね」
「しかし、あんたの身に何か起きたら知りませんよ」
「どんなことが起きようと私の責任だということにしたら?」
「あんたも仕様がない人だね。それに物好きだときている!勝手にしなされ」
ということになり、家の中でどこが寝られるか、それに食べ物と酒はどこにあるかを教えて、この家族は町に行ってしまった。
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