今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。この時間は、虫にまつわるお話と怖いもの知らずのお話をご紹介しましょう。
まずは「螻蛄(おけら)の恩返し」、その次が「「化け物の肉」」です。 では参りましょう。最初は虫の話しで、昔の「南皋(こう)筆記」という本から「螻蛄の恩返し」です。
「螻蛄の恩返し」
時は清の宣統時代。河南の崇山のふもとに馮子春という若者が母と二人で住んでいたが、母はその年の冬に風邪を引き、それをこじらしてしまい、なんと翌年の春にあっけなく死んでしまった。親孝行ものだった馮子春は、悲しみのあまり、食べるものがのどを通らなくなり、体を悪くしてしなんと杖をついて歩かなければならなかった。しかし、一ヶ月は母の墓の近くに小屋を建てしばらく住むことにした。
と、ある日の朝、馮子春が墓の掃除をした後、疲れたので小屋の外でしゃがんで休んでいると、近くの土の穴から数人の小人がそれぞれ得物を手に出てきてた。これら小人は、眉毛が長く、腰が細いし、顔は黒くて、僧侶の服をまとい、わらじを履いていた。
「なんだ?どうしたんだ?」と馮子春が目を見張ると、近くの土の穴からはこれら小人より体の少し大きな手足が長く、刃物のようなもの手にしたものが出てきて、双方は瞬く間に戦い始めた。それはすさまじい光景で、馮子春はあいた口がふさがらなかった。しばらくして戦いは終わり静かになった。そこで馮子春が行ってみると、なんと大きな一匹の螻蛄が横たわっていた。それは一本の足が折れ、腰のところに大きな穴が開いていて、まだ生きているらしく、足を震わせている。
「なんだ!さっきのは螻蛄と何かの戦いだったのか!」
幼いときから農村で育った馮子春は、この穴に帰れない螻蛄が哀れに思えたので、螻蛄を拾ってその出てきた穴にそっと入れててやり、しばらく様子を見ていた。そのうち螻蛄はゆっくり動き出し、ほかの螻蛄が迎えに来て、その助けの下に穴の奥に入って行った。
その夜、馮子春はおかしな夢を見た。夢には爺さんが出てきて馮子春にお辞儀したあと言う。
「これは馮子春さま。実はわれらとほかの虫に揉め事がございましてな。あなた様が今朝助けて下されたのはわしの息子でござる。あなた様は心の優しいお方、それにお体が悪いのに、まことにすみませんでした。このご恩は忘れませぬ。いまはだめでござるが、これから三年のうちに恩返しいたします。覚えておいて下され」
この夢に馮子春は首を傾げたが、どうせ夢のことだとその後は忘れていた。
馮子春はこのことがあったあと、いくらか元気になったが、杖はついていないものの、普通の人のように働くことができず、軽い仕事をしたりして稼ぎ、それで一人貧しく暮らしていた。
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