それから三年後に、戦が起こり、そこには住めなくなったので、仕方なく山に逃げ込んだ。そしてかなり歩いたが、やがてここが山奥とは思えない屋敷を見つけ、今夜は泊めてもらおうと屋敷を訪ねた。すると爺さんが出てきて、ニコニコ顔で中へ案内した。そして応接間へ通しお茶を出してからいう。
「馮子春さま」
これに馮子春はびっくり。
「どうして私の名を?」
「お忘れかな?今から三年前、あなたのお母様が亡くなられ、あなたはお墓の近くの小屋に泊まっていられたとき・・・」と爺さんが話し出したので、馮子春はあのことを思い出した。そして聞く。
「では、お年よりはあのときの?」
「そう。実はわしらは螻蛄じゃが、情けというものは一通りわきまえております。それにわしはあなた様にこの恩を返すと約束しましたワイ」
「え?あれは夢だったのでは?」
「わしはあなた様の夢の中で約束しましたの」
「そうですかな」
「そうですとも。そしてあなた様は、今でも体がよくなく、一人暮らしでいなさりますな」
「はあ」
「私があなた様のお体なら何とか治せますぞ」
「え?本当でござるか?」
「恩人にうそは申しません」
「では・・・」
「ここに、薬がござります。これを朝晩と二回お飲みなされ。そうすれば元気になりましょう。そうですな、半月ほど家(うち)に泊まってください。汚いところですが、それが一番いいようですぞ」
こういわれて馮子春は、願ってもないことなのでそうすることにした。こうして半月がたち、馮子春の体はすっかりよくなり、それに老人からなんと商いのことを教わり、元気で屋敷を離れた。
さて、そのときには戦も終わり、世の中は元通りになっていた。そこで馮子春は老人からもらったお金と学んだ事を生かして商いを始め、そのうちにかなり儲け、それにきれいな嫁までもらって子供を授かり、のちは幸せにくらしたという。
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