「実は張さんだから話すのだが、私は地獄で方術を学んできてね。一緒に金儲けしようじゃないか」
これに張さんは驚き喜び、「いったいどうするんだい?」と聞く。
「私は薬がなくとも病を治せるし、占いなんかしなくともことがはっきりわかる。私は姿を消すことができるので、張さんは耳元で聞こえる私のいうとおりにことを運べばいいんだ」
「わかった。そうしよう」
ということになり、翌日、二人は山西に向かった。
こうしてある町にきたところ、金持ちの娘がおかしな病にかかり、毎日寝てばかりいて多くの医者に見てもらったが治らないので困り果てているということを知った。そこで二人は早速金持ちの屋敷に行き、張さんが自分はきっと娘の病を治せるという。これに金持ちははじめは怪しんでいたが、張さんは王蘭の言うとおりに喋り捲ったので、金持ちはそれではためしに見てもらうかと思い、もし娘の病を治せたら銀一千両を出すといって。娘の部屋に案内した。そこで仰向けに寝ている娘の脈をとった張さんに、姿を消している王蘭がいう。
「張さんよ。この娘の魂はこの部屋にはないよ。ここで待ってていてくれ、私が探してくるから」
これを耳元で聞いた張さんはかすかにうなずき、「あまり長くならないように頼むよ」とつぶやいた。
そして張さんは金もちに言う。
「あんたの娘さんの魂は誰かに持ち去られましたな」
「え?娘の魂が誰かにもっていかれた?ほんとでござるか?」
「私はうそなどいいませんよ」
「で、ではどうすれば?」
「えへん!ご安心なさい。いまさっき、わたしが仙人にたのんで娘さんの魂をとりもどしに行かせましたから」
「大丈夫ですかな?」
「私を信じていなさい。あんたの娘さんの病はきっと治して見せますよ」
張さんがここまで念を押すので金持ちはしばらく黙ったあと隣の部屋で仙人さまを待ちましょうと言ってお茶を出した。
こうして一時ほどたったころ、王蘭が帰ってきて張さんの耳に「張さんよ。この娘の魂を取り戻してきたよ」という。そこで張さんはニコッと金持ちに笑って見せたので、金持ちも目を丸くして立ち上がった。張さんはまた、娘の部屋に行き、王蘭に言われたとおり娘に額に手をあてた。すると、娘は不意にうなり始め、しばらくすると目を覚まし、はっきりしたまなざしで父を呼んだ。
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