これに李仁義と手下どもはびっくり。見ると仙人らしき老人が家から出てきたので、いくらか慌てた。
「あんたは?」
「私はこの二羽の鶴の主でな。そのうちの一羽がこの若者に助けられたので、今日はお礼に来たのじゃ」
「なんじゃと?鶴の主じゃと?」
「いかにも」
「では言っておくが、鶴を助けたのはこの李仁義じゃぞ」
「ほほう。鶴を救ったのはそこもと?」
「もちろん。だから、鶴を救った礼はわしにするべきじゃ」
「ほう。そうでござるか。これは面白いことになってきた.。おまえさんがそういわれるのであれば、こういたそう」
「なんじゃね?」
「わしは今日二羽の鶴を連れてまいったゆえ、あんたと張華がそれぞれ鶴に乗ってお日様の屋敷にゆきなさい。あそこには黄金がたくさんある。わしの鶴を救ってくれた褒美としてあそこにある黄金を差し上げよう」
これを聞いた李仁義は大喜び。
「じいさんよ。それは本当だな!」
「わしはうそはいわん」
「よし、決まった。早くそこへ行こう」
張華、これにびっくりし、仙人にきく。
「仙人さま。わたしは当たり前のことをしたまでのこと。黄金などいりません」
「ふん、ふん。お前は欲がなくてよい。が、あの金持ちと一緒にいくきなさい。黄金を少しもらってもお前にとってはおかしくはない」
「じいさん!何をそこでぶつぶついっとるのじゃ。はやくお日様の屋敷とやらへ連れて行ってくれ」
「そう慌てなさんな。しかし言っておくが、屋敷に長くおると大変なことのなるぞ。明日の朝のお日様が昇る前に必ず屋敷を離れるのじゃ」
「大丈夫じゃワイ」
李仁義はめんどくさそうにいう。
しかし、張華は素直に「わかりました」と答えた。
こうして張華と李仁義はそれぞれ鶴に乗ってお日さまの屋敷に向かった。やがて屋敷についたが、そこには仙人がいうとおり、黄金がいたるところにあった。これをみて張華はびっくり。しかし、自分の欲しい田畑は仙人がくれると約束したので、張華は黄金を上着のもの入れいっぱいに詰めただけで、鶴に乗ってそこを離れた。しかし、李仁義はちがう。
「わっはっはっは!これでわしはこの世で一番の大金持ちになれるぞ。もてるだけもらってやる!」と横に積んであった袋をいくつも取り、それぞれに黄金をいっぱい詰め込んだ。これら袋を背負い、また李仁義をも乗せた鶴は必死に飛び立つが、あまりの重さに体が傾き、乗っていた李仁義はなんとまたお日さまの屋敷に落ちてしまった。このときにお日さまが昇ってきたので、熱さのために鶴は引き返して李仁義を助けることも出来なくなった。おかげで、欲張りものの李仁義は屋敷の中で焼け死んでしまったワイ。
さて、鶴に乗って戻った張華は、持ってきた黄金で李仁義の土地をすべて買い取り、それを貧しい人々に分け与え、自分は働き者のお嫁さんをもらって幸せに暮らした。
また、この年からお天道様は、どうしたことか、とてもやさしく、おかげでどの家も豊作。みんなの暮らしも良くなっていったという。
え?仙人と鶴?やるべきことをしたので仙境に帰っていったのでしょう。
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