今日のこの時間は、少数民族トン族につたわる「牛の尻尾」というお話をご紹介しましょう。
トン族の人口はおよそ252万。湖南省西南部、貴州省と広西チワン族自治区が隣接する地域に分布し、そのうち貴州省黔東のミャオ族トン族自治州が主な居住区域です。 トン族は多くの神と自然物を崇拝する原始宗教を信奉しているということです。でも、今日のお話は、宗教とは関係ないみたい。
では始めましょう。
むかし、湖南の通道県にトン族の人々が集まり住む吉祥村があった。村には聶という金持ちがすんでいて、財産も多く、かなりの土地を持っているくせに、ひどいケチで、人のためには一銭も出そうとはしないことから、村人たちからケチ親父と呼ばれていた。
ある年の秋。ケチ親父は十数人の村人を作男に雇い、山肌を開墾して畑を作らせた。それは大変な仕事で、一ヶ月半ですべてを終わらせるというもの。かなり無理なことだが、貧しい村人たちはそれでも一家を養っていくため、作男となって一生懸命働いた。しかし、ケチ親父がみんなに出す三度の食事は、家畜の餌みたいに粗末なもので、その上、東の空が明るくなる前に起こされて仕事に出され、夜は星が出るころまで働かされる。これに怒った作男たちは、ケチ親父の目を盗んでは山で寝たり休んだりしていた。
で、ケチ親父の屋敷にはアバオという少年がいて、実家の借金を返すために、幼いときから牛飼いとしてこき使われていた。このときは、ケチ親父、アバオに作男たちを見張らせるため、牛を山で放牧するよう言いつけた。これに作男たちは、いくらか警戒したが、そのうちにこの少年もひどい目にあっているの知り、またアバオはこき使われている作男たちに同情し、夜は作男たちと一緒に寝ていた。
と、ある日、寝不足である作男たちが、山で一眠りしようとすると、アバオが言い出した。
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