次の日、籠から鶴が逃げ出したのを見つけた李仁義は怒り出し、「なんということだ!鶴の肉が食えるところだったのに。ふん!きっとあの張華という若造が逃がしたに違いない。ものども、あの張華という奴を懲らしめて来い!」と手下に命じた。
そこで手下たちは、すぐに張華の家に来たが、張華は芝刈りに出かけて留守。怒った手下たち、家の中をめちゃくちゃにひっくり返すと、今度は山に登って張華を捜しだし、なんと張華を滅多打ちにして気を失わせ、引き上げていった。
しばらくして気が付いた張華は、傷だらけの体を引きずって何とか家まで這って帰り、床に伏したまま動けなくなっていた。
次の日、張華が床で苦しんでいると、自分が助けた庭で鶴の鳴き声がした。これを聞いた張華は、何とか起き上がって窓を開けて庭を見た。そこにはかの鶴が羽を伸ばして鳴いており、なんとその後ろにはもう一羽の鶴が舞い降り、それには白髪の爺さまが乗っていた。これはきっと仙人さまだと思った張華、慌てて床から降りようとしたが体中が痛み出しどうにも出来ない。と、そのときには仙人はすでに家の中に入ってきていた。
「こ、これは仙人さま!」
「張華とやら。そのままでおれや。実はあれはわしの鶴でな。危ないところを助けてくれて礼を言うぞ」
「礼なんて、とんでもない」
「いやいや。それにしてもお前は気の優しい若者じゃな。ま、助けてくれたお礼として、いま、お前の怪我をなおしてくれよう」
「私の怪我を?」
「そうじゃ。床で静かに横になり、目をつぶっていなさい」
こういわれた張華は、言うとおりにした。そこで仙人は右手を、仰向けに寝ている張華の顔の上に差し出し、それを足の上までなでるよう手を運んでいった。すると張華は体の痛みが徐々になくなるような感じがした。
「もう大丈夫じゃ。起きてみなされ」
仙人がこういうので目を開けた張華が起き上がってみると、上半身の痛みがなくなっている。そこで床を降りてみると、下半身も痛みを感じなくなっている。これに張華は大喜び。
「仙人さま。痛みはすべて取れました。どうもありがとうございます。」
「いや、いや、礼には及ばん。そこで聞くが、お前は何がほしい?」
「え?」
「何かほしいものはあるかと聞いておるのじゃ」
「は、はい。えーっと。それでは、田畑を少しください。私は働いて幸せをつかみます」
「うん、うん。いい考えだ。それはよい」
「でも、大雨や日照りは困ります」
「よし、よし。お天気の方はわしに任せておけ」
このように張華と仙人が話していると、鶴が帰ってきたことをどこからか聞いたのか金持ちの李仁義が手下を連れて張華の庭にやってきた。
「おお!鶴はここにおったか!それに二羽もおるぞ!わっはっははは!これは儲かった!それものども!二羽の鶴をつかまえろ!」
そこで手下どもは鶴を捕まえにかかった。もちろん、二羽の鶴は手下どもに捕まらないように空中に飛びあがる。この騒ぎに仙人は外に出た。
「どなたじゃな?わしの鶴を捕まえようとされているのは」
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