「なんだ?何をする?」
「おお。お前は耳が聞こえるじゃないか?」
「それがどうした?」
「なんだと?俺たちが話しかけているのに、どうして返事しなかった?」
「返事などする必要はない」
「なんだと?かわいい顔しているくせに生意気な口利くな!こいつ」
「そうだ。そうだ!おい!」
と一人が他の二人に目配せした。これに気付いた少年は逃げ出そうとしたが、それを一人が後ろから少年の襟を掴んだので、少年はばたばたした。これを見た犬が急に吠え出した。この犬は普段はおとなしく、めったに吠えないのだが、このときは自分の主が危ないとわかったのだろう。激しく吠え、なんと飛び上がって少年の襟を掴んでいるどら息子の腕に噛み付いた。これに他のどら息子の腕に止まっていた鷹が驚き、飛んでいってしまった。もちろんどら息子たちもびっくり。そこで腕をかまれたどら息子は、痛いのをこらえて少年の襟を掴み続け、ほかの二人が腰に挿した剣を抜いて、なんと犬を刺し殺してしまった。
これに少年はびっくりして、自分の襟を掴んでいる腕を振り解き、倒れた犬に覆いかぶさり、激しく泣き出した。これに三人のどら息子はげらげら笑い出し、伏せて泣いている少年を引っ張り起こし、なんとその服を剥ぎ、とうとう裸にしてしまい、近くの葦の池に放り込んだ。
「ざまあみろ!池の中で頭を冷やせ!」と三人は言い残してどこか行ってしまった。少年は池の中でばたばたしていたが、池があまり深くないことに気付いたものの、あまりひどいことをされたので、泣きながら助けを呼んだ。
どのぐらいだっただろう。向こうから馬に乗った武士がきたので、少年は声を張り上げた。これに気付いた武士は、馬から下りて少年を池から助け上げたので、少年は武士に礼をいい、岸辺に散らばっていた服を着た。武士はこれをみたあと馬にのり、その場を立ち去った。
そこで少年は慌てて大好きだった犬の亡骸の上に伏せてしばらく泣いたあと、犬を抱いて家に帰った。そして庭に穴を掘って犬を埋め、またしばらく泣いていた。
その夜、少年の夢に死んだ犬が出てきていう。
「ご主人さま、私の生きている間は、本当にかわいがってくださいまして、ありがとうございました。そしてご主人さま。これから出かける際は、十分気をつけなされませ。もし、危ないことがあったらこのわたしめが必ずお助けいたします。ご心配なく」
眼を覚ました少年、この夢を不思議がったが、これに何かあると固く信じていた。
さて、それから半月の間、少年は遠くへは出かけることはなく、ほとんど家で本を読んだり、詩を書いたりして、可愛がっていた犬を失った悲しみを忘れようとしていた。
ところが、ある日、通州に住む叔母が病に倒れたという手紙をみて、赤ん坊のときに二親をなくしたあとの自分を育ててくれたこの叔母を見舞いに行くことになった。
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