「黄色い犬」
むかし、肌が白く、黒い眼をして人に会うといくらかはにかむ少年がいた。少年は一人暮らしで、黄色い犬を飼っており、どこへ行くにもこの犬を連れ、寝るときも、犬は必ず床の横にうずくまっていた。
ある日の夏、少年は犬を連れ郊外に散歩に出かけ葦の池の近くまで来たとき、空模様が怪しくなり、そのうちに大雨が降り出したので、少年は大きな樹の下に走り込み雨宿りしていた。
しばらくすると、この少年より年上の金持ちの三人のどら息子が鷹を腕に止め、剣を腰に挿し、あたふたと走ってきて、雨宿りに樹の下に入った。そこで、人付き合いが嫌いな少年は、雨に濡れないように側によったところ、三人のどら息子は、この樹の下の先客をじろじろ見た。そして少年が女子のように美しいので変な気を起こし、一人が黄色い犬を見た後、ほかの二人にいう。
「白と黒、それに黄色か」
これに他の二人はニヤニヤして答えた。
「まったくだ!ひひひ!色が白いし、眼はまっくろ!それに真っ黄色な犬を連れていやがら・・」
これを聞いた少年はいやな感じがしたが、知らん振りしていた。そこでどら息子の一人が、「こいつは耳が聞こえないのか?」とあざ笑う。少年はそれでも聞こえないふりをしていたが、このとき、雨が小さくなったので犬を連れて樹の下を離れようとした。すると最初に変なことを言い出したどら息子が、ふと出てきて少年の行く手をさえぎった。
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