北京市家政サービス協会がこのほど、「月嫂」(ユエサオ)のサービスと賃金の基準を発表しました。まず、中国では、「月子」(ユエズ)、「月に子」と書く言葉がありますが、これは、出産後1カ月の間を指します。
「月嫂」とは、月子の間、つまり産後1か月の間、産婦と新生児の世話をする専門の家政婦のことです。産婦、お母さんの食事を作り、哺乳方法を指導し、赤ちゃんの世話をする24時間の産褥シッターです。
80年代からの「一人っ子政策」で中国の家族構成は、祖父母4人・父母2人・子ども1人という家が大部分を占めるようになりました。一人の赤ちゃんには3つの家庭(父母、父方の祖父母、母方の祖父母)があり、赤ちゃんの健康を何より大事にしている家庭がほとんどです。
家政サービス協会が発表した基準は月嫂の最高収入が1万元(13万円)近くになると規定しています。日本人から見ればそんなに高くないかもしれませんが、このような月収はホワイトカラーより高いです。現在、中国では主に大中都市で約5万人が「月嫂」に従事しています。北京市家政サービス協会の調査によると、「月嫂」はその派遣会社の基準に従い、高級、中級、初級などのレベルに分けられています。
一般レベルでも5万円から8万円ぐらいですから、大学新卒者の賃金水準を大きく上回っています。それでも、予約できないという状況も多く見られるようになっています。2012年は辰(龍)年です。中国では辰年の子供は皇帝のように出世するということで縁起がいいそうです。そのおかげで今年に入って、「龍宝宝」の出産ラッシュに伴い、「月嫂」の需要が急増し、給料も跳ね上がっています。
その「月嫂」ですけど、賃金が高いといっても、ほとんど24時間体制だし、それなりの技術も必要ですから、けっこう大変です。誰もが出来る仕事ではないですね。そのほか、深センの建築労働者の賃金リストも最近ネットでホットな話題になっています。左官の日給が220元(3000円)、1カ月で9万円、チームリーダーだと14万円を越えるそうです。一般のホワイトカラーの給料よりずっと高いです。
そして、宅配便の就業員も、年末のネットショッピングのシーズンになると月14万円になります。でも、つらい仕事ですよね。北京は寒いし、エレベータのない住宅がたくさんありますし。残業も多いですし。
月嫂ですが、80年代に生まれたベビーブーム世代の結婚適齢期到来により、中国では、新たなベビーブームとなる可能性が高いんです。中国における幼児産業は規模が大きく、且つ成長率の極めて高い市場となっているようですね。
穎:最近の第5次全国人口調査によると、中国では0-3歳の幼児の数が7000万にも達しました。そのうえ、毎年約2500万の新生児を迎えることになるようです。その内、10%の赤ちゃんの世話を「月嫂」がすると計算すると、毎年、全国では「月嫂」が約250万人も必要となるということです。
でも、実は、ブルーカラーの高い収入は先進国ではそんなに珍しいことではありません。例えば、日本でも昔はお手伝いさんや家政婦さんが普通の家でも珍しくありませんでした。それが、やはり高度成長と共に人件費が上がって、一般の家ではお手伝いさんを雇えなくなりました。それと大工さんなどのある種の技能を持ったいわば職人さんの手間賃もぐいぐい上がって、一時は大卒よりも収入がいいと言われましたから、同じような現象が今、中国で出てきたというわけです。
今まで、中国では小学校、中学校、大学、修士、博士と上に行けば人生が完璧になり、いい就職ができいい生活ができるという考えをたくさんの人が持っていました。だから、ブルーカラーになるのは、あまりよいことではないという観念がありました。でもそのおかげでブルーカラーが足りなくなってくると、賃金が上がりますね。逆に、博士になったからと言っていい仕事が見つかるわけではないという状況になってきました。
学歴偏重という考え方はチェンジしなければいけないと思いますが、だからと言って、全体には大卒の方が高い給料をもらえる可能性はまだまだ大きいので、なかなかなくならないとおもいます。
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