このほど北京で開かれた全人代と全国政治協商会議、いわゆる「両会議」では、張芸謀(チャンイーモウ)監督や馮小剛(フォン・シャオガン)監督、北京映画学院の張会軍院長をはじめとする6人の政協委員が共に意見を提案しました。映画業界のスリム化を求め、映画館の入場料を値下げするよう呼びかけたんです。提案の中で「映画館の運営コストや映画制作コストの高騰により、中国では映画入場料が一般国民にとっては高く、入場者数が増えない原因になっている」と明らかにしました。
いま北京では、映画館の一般入場料は70元か80元、日本円にするとおよそ千円程度ですね。もしこれが3DやIMAXの作品なら、100元から120元もします。大学新卒者の平均月給が3000元未満の北京では、映画館の入場料は本当に高いです。ここ数年、消費者物価指数のCPIがどんどん上がり、映画館の入場料も著しく値上がりしました。例えば、30年前の1982年、李連傑(ジェット・リ)のデビュー作「少林寺」は中国で大きな反響を呼び、大ヒットとなりました。当時、この映画の入場料はなんと1角、つまり0.1元でしたよ。いま、普通の映画なら、70元か80元もしますから、700倍や800倍も値上がりしたことになります。
また、入場料の高騰によって、国内の興業成績では相次いで新記録が誕生しました。去年の2011年、中国大陸部の年間興業成績はなんと130億元に達しました。また、ハリウッドの人気作、例えば「トランスフォーマー3」の「ダークサイド・ムーン」は上映4日間で4億元を記録し、大陸部での興業成績はなんと10億元に上ったんです。一方、話題作や人気作以外の作品を見て見ますと、観客が少なく、公開初日の入場者は僅か7人しかいなかったという惨めな記録のものさえありました。
では、中国の映画入場料が高騰していることに、何か理由があるのでしょうか。
やはり人口規模によるものじゃないですか。中国は人も多いですし、しかも改革開放によって、都市化がどんどん進み、都市部の人口が絶えず拡大しています。映画を見る人も次第に増えるでしょう。入場料の値上がりも膨大な市場ニーズがあるからですし、市場経済の結果と言えますね。映画を見る、または見たい人がどんどん増えたため、映画館の運営コストも上がり、入場料が高くなったというのは理解できます。
しかし、関係者によりますと、入場料の上昇によって、一番儲けているのは映画館ではなくて、実は不動産業者です。中国映画グループの取締役社長韓三平氏の紹介によりますと、いま、中国では、映画の年間興業成績は100億元を超えたにも関わらず、国産映画の利潤はわずか10%しかないということです。なぜかというと、北京や上海、広州などの大都市では、ここ数年間、映画館の家賃が2、3倍もあがりました。さらに一部人気がある商業施設や娯楽施設の映画館は興業収入の20%から25%を不動産、つまり映画館の大家に渡さなければならないという契約があるそうです。映画館に限らず北京の人気エリアの家賃は異常な値上がりをしているというもの聞いたことがあります。
また、映画料の高騰にある一つの理由は、映画商品の単一化です。外国では、映画が上映された後、DVDの発売やレンタルなど、関連グッズの販売も映画そのものの付加価値になります。しかし中国では、映画の商品としての価値は上映されてからほぼ1ヶ月しか続かないということです。(一般公開されると、海賊版のDVDが出回るんです)。これは映画館の入場者数に影響を与えるでしょう。
最後の理由は優れた作品が少ないことです。ハリウッドの人気作が優れた興業成績を上げられたのは、口コミはもちろんのこと、作品自身の魅力も重要なポイントです。例えば、2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督の「アバター」は沢山の観客を集めました。一部入場券を手に入れられなかった人はダフ屋から高価な切符を購入して見に行ったんです。1回だけじゃなくて、何回も映画館に行って見た人がいますよ。
やっぱりいい作品であれば、みんな喜んでお金を出して映画館へ見に行きます。例えば、30年前の「少林寺」は、中国で5億人の観客を動員しました。1980年代の5億人で、およそ半数の中国人がこの映画を見たと言えます。しかし近年一番評判の良かった国産映画、姜文(ジャン・ウェン)監督の「譲子弾飛(弾丸を飛ばせ)」は、国内で2千万人の観客を動員しました。これでも非常に優れた成績です。高い入場料は一部低収入の観客を制限しているんですね。それでも見たい人はやむを得ず海賊版に手を出してしまいます。映画制作者にとっては、結局損になりますね。悪循環です。ですから、最近では映画入場料の多元化という意見が出ています。
映画の入場料はどれぐらいにしたらいいのか、世界範囲で見ても、決まった国際基準はありません。例えば、フランスは9ユーロ(人民元の約80元)、アメリカは11ドルから12ドル(人民元の約60元)、この値段は時には飲み物やポップコーンも付いています。また、シンガポールは平日35元で、週末50元です。実は日本も安いとはいえないですよ。だいたい1800円です。
映画大国のアメリカを例にすれば、アメリカで映画館の入場料はアメリカ人の平均月給の400分の1ですが、中国では40分の1となります。つまり収入から見てみると、中国で映画を見ることはアメリカのおよそ10倍も高いと理解できます。今回政治協商会議の委員や一部映画関係者の出した提案では、「中国の映画入場料は20元か30元程度、高くとも40元を超えてはならない」としました。いまのほぼ半分か3分の1ぐらいですね。すると、同じ値段で3本の映画が見られることになりますね。入場料の値下がりはもちろん興行成績にある程度の影響を与えますけど、値下がりによって、より多くの人が映画館に行くなら、動員数も高くなり、かえって高い収益を得られるかもしれません。みんな気軽に映画館へ行って映画を見ることが習慣になれば、海賊版の問題も抑えられますね。
映画を作っている人たちは、自分の作品をより多くの人に見てもらいたいと思うはずです。海賊版ではなく、ちゃんと映画館で見る人が増えれば、映画関係者の仕事もより多くの人に認められると思います。映画制作側や映画館、観客にとってもいいことなわけですね。これこそまさにウィンウィンと言えます。でも、市場を動かすことはそう簡単にできるのか、今度の動き、興味深いですね。この話題の進展など、今後とも続報をお伝えします。(「イキイキ中国」より 03/15)
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