創立100周年を迎えたばかりの中国の名門大学、清華大学。このほど、その4号校舎に新しい校舎名の看板が掲げられました。それは清華大学のスポンサーであるアパレル企業のブランド名です。100年の伝統を持つ清華大学、そのブランド価値はスポンサーの企業名を遥かに上回るものです。このような改名は清華の名を汚したという声が高まり、様々な議論にさらされました。学問は崇高で、商業はそれに反するもの。学問と金儲けを一緒にするな、と思う人はたくさんいますから。
実は、中国では、スポンサーの名前で校舎のビルやスタジアム、実験室、図書館などの施設を命名するのは、初めてのことではありません。これまでにもたくさんあります。例えば、ほとんどの大学には「逸夫楼」というLLセンターがあります。これは香港の映画大手の社長・邵逸夫さんの寄付によって作られたので、邵さんの名前がつけられたんです。このような例はまだまだ沢山あります。でも、これまで、ほとんどはスポンサーの社長さんの名前、つまり人名で施設を命名したので、そんなに違和感は感じられないようです。しかし今回は、スポンサー企業のブランド名で命名し、清華大学のブランドとこのアパレル企業のブランドはまったく同じレベルのものではなく、しかも、イメージ的にも相応しくないため、みんなの反感を招いたと見られています。「お金を払ったら何でもできる」ということを認めた形にもなるし、大学に商業の匂いがするのは好まれないんでしょう。大学は文化機関ですから、その施設の命名は出来るだけ文化的なスピリットを生かして、商業的な雰囲気を避けてほしいですね。
ところで、日本では、例えば、東大は国立の大学で、早稲田や慶応などは私立ですね。こちら中国では、北京大学とか、清華大学など、すべては国立のものでしょう。国立の大学は企業からの寄付によって、関連施設を企業の名前にすることが出来るということですか。
中国では、確かに大学の9割以上は国立のものですけど、市場化プロセスによって、いろんな科学研究を進めるため、国からのお金だけでは足りず、企業からの寄付が必要ですね。このような寄付を奨励するため、寄付金によって大学の施設を命名する権利が与えられるようになりました。大学の発展にはスポンサーからの支援が欠かせませんね。でも、お金を出せば、どの企業でもスポンサーになれるというわけではないんです。大学はあくまでも教育機関、文化機関ですから、文化的な伝統と商業的な運営方式、調和を取りながらうまく融合させるべきですね。
また、これについて、最近、もう一つのホットな話題があります。それはこのほど中国国家博物館でオープンしたある特別展のことです。中国国家博物館は天安門広場の東側にあり、日本の国会議事堂に当たる中国の人民大会堂と天安門広場を隔てて向かい合っています。昔は、中国歴史博物館と中国革命博物館に分かれていましたが、数年間の改築と修復工事を経て、この4月に中国国家博物館としてオープンしました。
しかし最近、この国家博物館では、フランスのルイ・ビトン(LV)社が特別展を行いました。19世紀のスーツケースなどが展示されています。「博物館はデパートではない」、「お金を出せば、誰でも国家博物館で出展できるのか」と、インターネットでは反対の書き込みが殺到し、話題を呼んでいます。文化は文化でけっこうですが、文化もお金がないと育たないと思っています。中国のこうした試みは斬新だし、若い人の誘致にも一役買っていると思うんですが。でも、国家博物館だけあって、こういう動きを好ましく思わない人がたくさんいるんです。やはり国家博物館なら、名前どおり、出展内容はある程度歴史や文化の重みを表せるものにするべきではないかという意見が多いんです。もちろん、商業社会では、商業的な要素も文化を伝える一つの手段です。文化機関が一定のビジネス運営を行うのは理解できますが、どの程度まで行うのかを判断することがたいへん重要ですね。
古い物を守ってゆくことと、進化とはいつも対立で考えられますが、どちらも否定しない考え方を持ってほしいです。一方に偏ることが一番危ないですね。確かに、中国はいま、経済発展、社会発展の転換期にあり、いろいろと不思議なことが多いです。西洋と東洋、伝統と革新、昔と今、いろんなカルチャーショックにさらされています。こんな時期だからこそ、少し冷静になり、常に反省しながら今後の発展を見直すべきです。(「イキイキ中国」より)
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