■中国人企業家、分か別れる慈善事業への見方
中国において、世論は今回の「バービー・バンケット」に高い関心を払ったことの背景に、中国社会における富裕層の形成及びここ数年、増えつつある民間からの義捐金金額とその管理への注目によるものといえます。
今年4月に発表された「2010胡潤ランキング(中国の富豪ランキング)」(「胡潤」は英国人ジャーナリストのフージワーフ氏の中国語名)では、中国には千万長者が87万5000人、億万長者が5万5千人います。さらに、中国の最も寄付金額の多い太っ腹な50人による寄付金額は2008年では38億9000万元でしたが、2009年では82億1000万人民元に膨らんできました。
一方、今回のバンケット主催者からの要請に対して、中国の資産家たちの反応には温度差が見られました。
出席招請を受けた後、ただちに出席を表明し、「死後、全財産の寄付」を声高らかに宣言しいた民営企業家もいれば、「真の慈善は全財産を寄付することではなく、社会に対して富を継続的に作り出すことにある」と出席を見合わせた経営者もいました。
■各界の評価
取材に集まった記者陣
中国のメディア各社は今回の「バービー・バンケット」をいずれも大々的に報道しました。
バフェット氏とゲイツ氏が紹介したアメリカ社会における慈善事業をめぐる人々の意識、制度設計、管理などが注目されています。たとえば、アメリカでは毎年、GDPの約2%が義捐金として社会の発展に使われていること、アメリカ慈善基金会は義捐金の使い方に対して極めて透明で、明確な記録を行っており、それを一般公表しているなどの点が紹介されていました。
アメリカの投資家アイナ•トーゴンさんは新華社通信のインタビューにで、「中国は社会の転換期にあり、富裕層が現れてからたのはわずか20年ほどの歴史しかない。どのように富を使って社会に還元するのかは、まだ模索の段階にあるため、今回のバンケットは中国の富裕層にとって理念の交流及び発想の拡大につながるだろう」と見ています。
中国慈善事業研究センターの汪大海主任は「今回のバンケットはバンケット氏とビルゲイツ氏が中国で行った『戦略的な慈善活動』」で、中国の慈善事業の発展に積極的な役割を果たすせるだろう」と見ています。
中華慈善総会の李本公副会長は新華社のインタビューに対して、「今回のバンケットは中国社会の慈善に対する注目度を高めた」と評価し、「中国には古くから人を助ける慈善の伝統があり、最近は、各種様々ななかたちで慈善事業に参加するようになった人が増えつつある」と話し、また、「慈善事業もその他の事業と同じように、積極的に開放し、大胆に外部の経験を参照にすべきだ。アメリカのやり方に数多くのことを学ぶことができるが、そっくりそのまま移したり、盲目的に導入したりするというこれまでの過ちを避けるべきだ」と話しました。
なお、28日付の『公益時報』は、現在、中国の慈善事業が直面している現状とは、中国の民営企業が世界の産業チェーンに占める位置が低くて、まだ発展のスタート時点にあり、完備したコーポレートガバナンスもできておらず、資本の蓄積がまだしっかりしていない、現在の中国にとって、富の創出、雇用の拡大こそ一番の慈善だと指摘した上で、中国は自国の実情に適した慈善モデルを確立すべきだと呼びかけました。
なお、「バービーバンケット」の開催と同じ時間帯に、北京では富裕層ではなく、一般市民の参加を対象にした「平民バンケット」が開かれました。56人の募集枠に対して、応募者が500人余りを超え、最終的に100人ほどに限定しての開催となりました。こちらでは一人38元のビュッフェバイキング形式で開かれ、慈善活動をめぐり、自由なディスカッションが活発に行われたということです。
「バービーバンケット」は、数時間の出来事しか続きませんでしたが、中国社会の様々な面に投げかけた波紋と思考はまだ続くようです。(Yan)
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