中国ではここ数ヶ月、一部の農産物、特にニンニクやリョクトウ、トウモロコシなどの価格が急激に上昇しています。これによって、インフレに対する懸念が高まっています。農産物の価格が急に上がったのは、なぜでしょう?一緒に探ってみましょう。
中国中部、河南省の中牟県はニンニクの産地です。今、畑には広い面積でニンニクが植えられ、まだ熟していないのですが、すでに注文を受けているそうです。地元で、ニンニクを卸売りする場合の価格は、2008年は1キロ0.1人民元(約1.3円)でしたが、それが今、80倍になって1キロ8元(約100円)に上がっています。ニンニクを30年以上栽培しつづけているという地元住民の李さんは、なかなか不思議な値上がりぶりだと話しています。
「今年のような値上がりは、今までありませんでした。この前の何年間は、すごく安かったので、利益はあまりなくて、損しなければ幸いだ、と思うくらいでした。安くしても売れないから、たくさんのニンニクをそのまま捨ててしまったこともありました。でも今年、値段が急に上がってきていますね。全然、思いもしませんでした」
これと同時に、リョクトウやトウモロコシの価格上昇も目立っていますが、これについて、中国農業省で農作物の栽培の管理などを担当する馬淑萍さんは、需要と供給の不均衡が原因の1つだと指摘しました。馬さんは、次のように述べています。
「だいたい2年か3年前、ニンニクやリョクトウが安すぎたから、農民たちはだんだん、それらの作物を植えなくなりました。それに自然災害の影響もあって、それまでに比べ、収穫の量はだいぶ減りました。でも、去年の半ば頃から、需要が一気に増えてきました。それで、需要と供給のアンバランスがどんどんひどくなって、当然、価格も上がったわけです」
実は、今回の農作物の価格上昇の背景には、投資家の投機もあるのです。今年から、不動産価格の急騰を抑えるために、中国政府は一連の措置を実施して、不動産市場への投機的な資金の流入を規制してきました。それから、株式市場も下落気味になっています。それで、投資家たちは新しい目標を探しているわけです。そして、産地が集中していて自然環境に影響されやすい一部の農産物が狙われました。その人たちは、ニンニクなどを不正に買い溜めして、その価格を無理に押し上げてきました。これについて、中国社会科学院農村発展研究所の李研究員は、こう述べています。
「そもそも、投機的な資金は、農産物の価格を操作しようとしても、大幅に上がったり下がったりすることはないはずです。しかし、自然災害などがあって農産物の収穫量が大きく減ったときに投機目的の資金が加わってくると、その効果が大きくなって、値上がりや値下がりの幅も拡大されてしまうのです」
政府は、農産物の生産や価格体制を安定させるために、生産地や卸売市場を増やし、その輸送を整備することに力を入れています。すでに、そのための調査団を各地に派遣しているそうです。それと同時に、投機を目的とした資金流入を止める措置を実施しています。
ニンニクなどから始まって、農産物全体の価格が上昇すると、それをきっかけにインフレが起こるのではないかと懸念する声もありますが、これに対して、中国農業省市場・経済情報局の隋さんは、次のように指摘しました。
「ニンニクやリョクトウ、それにアズキもそうなのですが、値段がいくら上がったとしても、その影響は、中国の主な農作物に及んでくることはないと思います。我々は、主要農産物の生産から販売まで、常に監視しています。今の中国の農産物市場には、投機資金があるにはあるのですが、市場に影響するような規模ではないのです」
中国政府のまとめによりますと、中国では6年連続して豊作であり、食料の備蓄も十分です。それに今年は、夏に収穫する予定の農作物の成長も良く、豊作が期待されるということですから、価格に大幅な変動はないと見られています。(翻訳:鵬)
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