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吉林省の旅 リポートNo.5

2011-09-10 14:49:06     cri    

 本日は吉林省取材旅行、最終日です。最終日にふさわしいメニューです。今日は朝から長白山へと向かいます。この山は満州族の発祥地で、満州族が古来から崇めてきた霊山です。清代の乾隆帝の時に、この山へ人間が足を踏み入れることを禁じました。以来300年近くこの山は人間の世界から隔離され、生命の営みを繰り返していたのです。清朝の崩壊とともに誰の管理も受けなかったため、自然がそのままの状態で現代まで残されることになりました。

 この価値が見直されたのは1970年代です。今は、自然保護のため厳しく地方政府が管理しています。

 そしてこの山はまだ生きている活火山です。ガイドによると2013年か2014年に再び噴火するという噂もあるそうです。もしかしたら再来年には、登ることができない山かもしれないのです。私たちが目指したのは山の頂上にあるこの山の宝、天の池と呼ばれる、カルデラ湖「天池」です。しかし、この湖は誰もが出会えるわけではありません。山の天候は変わりやすく、その姿を見せてくれるかどうかはまさに運だめしのようなものなのです。

 本日の天気はくもり。まさに雲行きが怪しい天気です。山の麓に着いた頃には小雨が降っていました。ガイドの方もレインコートを配りながら「今日は見られないかも」と言っていたので、ちょっと登る気もそがれ、雨女と呼ばれる自分の運の悪さを呪いました。

 麓からは道路が開通していますので、頂上付近まで電気自動車で移動です。電気自動車を使用するのも、もちろん環境保護のためです。45分ほど走り、山小屋に到着しました。ここにはダウンジャケットや靴、お土産品が販売され、簡単な食事ができるようになっていて、すでに多くの登山客でにぎわっていました。


山小屋

 山小屋はすでに海抜2000メートルを超えた地点にあり、気温がぐっと下がります。足の先の感覚がなくなり、手もかじかんできます。とにかく早く体を動かしたくて、山道を登り始めました。山道といってもすべて階段です。全部で1268段。


石と木の階段があります。

 中国はこのように頂上まで階段が設置されているため、登山といってもかなりの軽装で来る人が多いのですが、これが山を甘くみてしまう原因になっているのではないかと思います。やはり登山にはそれなりの装備が必要です。確かに出張の前には「厚いコート持ってきて!」との連絡はありましたが、これは私の想像をはるかに超える寒さでした。コートでは足りません。耳あてと、手袋、マフラーもなくては!といろいろ考えても時すでに遅し。とにかく寒さは容赦なく襲ってきます。前を見ても霧につつまれはっきり見えず、何でこんなことをしているのかと絶望的な気分になってきました。寒さは人の思考能力を奪います。とにかく動きを止めると寒さが襲ってくるので、足を動かしつづけます。しかし、上にあがっていくにつれ風が激しくなり、なんと追い討ちをかけるように雪までちらついてきました。登っているほんの30分ぐらいの間に天気はめまぐるしく変わっていきます。寒さのあまり耳まで痛くなってきました。半分ほど進んだところでそれまで様々な高山植物が茂り、緑だった山が突然灰色に変わりました。火山灰です。これが見えてくればもうすぐ頂上です。果たして天池は私たちにその姿を見せてくれるのでしょうか。


上の灰色の部分が火山灰。

 休みながらゆっくりと足をすすめ、頂上まであと一息というところで、先に頂上に着いた人が両手で大きな○をつくって、サインをくれました!

 ○です、○。そうです。天池が見えるということです。先ほどの重苦しく立ち込めていた雲はどこかへ消え去り、雨も止んでいました。いっきにテンションがあがり、力も湧いてきます。そして登りきったその先に見えたのは、足元で青く輝く天の池でした。先ほどの寒さもどこへやら、急いでシャッターを切りました。またいつその姿を隠すかわからないのです。


カルデラ湖、天池。湖の向こうは朝鮮。

 こんな山の頂上に丸い月のような湖。自然の創造力には神秘的なイメージがつきものですが、この湖も確かに私たちの目の前に広がっているのに、まるで別の次元に存在しているかのようでした。山が再び噴火すればこの湖も消えてしまうのでしょうか。

 はじめての長白山で、天池を見ることができたのは本当にラッキーでした。

 さて北東アジア博覧会に始まり長白山の登山で終わった吉林省の取材、たった5日間でしたが、出会った人々、事柄を思い返すと非常に濃厚な時間を過ごしました。また1つ中国の新たな顔を知ることができました。経済面でのニュースが多い中国ですが、「なぜ、こうなのか」、「今、どのような時期にあるのか」などを本当の意味で理解するには、やはり歴史と文化を知ることが必要だと改めて感じました。決して遠回りではありません。中国は私たちが思うよりもっと、土地ごとにそれぞれに複雑で多様な特色を持った国なのです。(吉野綾子)

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