四川大地震で壊滅的な被害を受けた北川中学。そのニュースは日本でも広く知られていると思いますが、その後、この北川中学の生徒たちは新校舎ができるまで、綿陽市にある家電メーカーの職業訓練校である長虹集団培訓中心に仮校舎を建てて、そこで授業を行うことになりました。
四川での取材の最終日の28日、我々一行はこの仮校舎を訪問しました。ちょうど午前中の授業が行われている最中で、広々としたグランドでは体育の授業が行われていました。中国の学校では大抵、体育の授業でも体操着に着替えることはなく、普段どおりの格好で、軽いランニングや卓球など思い思いの運動をしていました。その様子はごく普通の中学生や高校生(中国での中学は日本の中学校と高校にあたります)と変わらない印象を受けました。
グランドの向かいに建つ校舎に、生徒たちを対象にしたリハビリセンター・北川中学康復站があります。これがあるおかげで、リハビリを受けながら、普段の授業も受けることができるというわけですが、この日車椅子に乗った17歳の高校1年生の女の子・郭冬梅さんが来ていました。普段は午後、リハビリに来ているそうですが、今日は音楽を聴き、雑誌を見るために来たそうです。
震災前は週に一度は実家に帰れたけれど(この学校では震災前も生徒たちは寮生活を送っています)、今は半年に一度しか帰れないのが淋しいと言う冬梅さん。
しかし、そんな彼女も普段は音楽が好きな17歳の女子高生。外国に行ってみたい?と聞くと恥ずかしそうに顔を赤らめて、
「韓国へ行ってみたい」
とぽつり。冬梅さんは震災で海外からの組織に助けられた訳でもなく、外国人と普段から接しているわけではありません。どうして?と聞くと、韓国ってとってもきれいだから、との答え。それでもどうも腑に落ちず、もう一つ質問。
「ひょっとして韓国ドラマが好きだとか?」
と聞くと、「大好き」と即答。これには一同大爆笑でしたが、たとえ震災に遭っても、普通の女の子であることは変わらず、なんだか妙にほっとしました。
冬梅さんは震災で辛いことを沢山経験してきました。しかも自身、負傷したことで大変な思いをしてきました。しかし、いろんな人に支えられ、今、この仮校舎での生活は満足していると言います。
「医師になりたいです」
冬梅さんは将来の夢をそんな風に語りました。それまでお医者さんなんて恐ろしい存在と思っていた彼女でしたが、震災後、いろんな人を助けられることを知り、自分のその道に進みたいと思うようになったと言います。
我々の問いに目をきらきらと輝かせて答える姿がとても印象的だった冬梅さん。1日も早く良くなって、夢に向かって文字通り自分の足で歩み出して欲しい――そう願わずにいられませんでした。加油(がんばれ)!冬梅さん。
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