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護岸のために使われました |
成都から北西へ約60キロ。ここに世界遺産に登録された古代の水利施設・都江堰があります。古代の、といっても現役で、はるか2000年以上前から現在に至るまで、四川の大地に恵みをもたらすだけでなく、岷川の洪水を防止するという役割も果たし続けています。日本人にとっては世界遺産の一つとして知られているようですが、こちら中国では、学校の教科書にも紹介されるほどで、この都江堰を建設した李冰とその息子の李二郎とともに、誰でも知っている存在となっています。そんなわけでここはどちらかといえば中国の人たちになじみのある場所のようです。
都江堰は水と緑の公園の顔も |
地震の前は、世界遺産に登録されたこともあって、海外からの観光客が大勢訪れる場所でしたが、地震後はその客足がすっかり遠ざかったといいます。しかしその代わりに中国各地からの観光客が大勢訪れるようになり、昨年よりも増えているということです。
CRIの取材団がここを訪れた時は26日の日曜日の午前、週末のため大勢の観光客で賑わっていました。確かに行き交う人々の言葉は中国語がほとんどでしたが、欧米人と思われる人もちらほら見かけました。しかし、日本人はいません。
成都の空港で日本からの団体客を見かけましたが、成都市内に入ってくると、不思議とどこにもいません。北京だと、故宮や万里の長城、頤和園といった世界遺産に行くと必ず見かけるのですが、やはり地震が影響しているのでしょうか。
修復中の対岸の廟 |
都江堰は震源地からわずか20キロ足らずの場所にあるため、震災による被害を受けました。岷川の水を分けるための施設・魚嘴は既に修復されましたが、都江堰を作った李冰親子の廟をはじめ、都江堰の敷地内にある建物のいくつかは今なお修復工事中です。
しかし、都江堰を流れる岷川のせせらぎと木々の緑の美しさには何ら影響はありません。私が暮らす北京では、川があっても音を立てるほど流れておらず、木々があっても水が足りないせいか青々とした感じがしません。特に日本で暮らしていた時には川は身近な存在だっただけに、ここ都江堰ではそれらが何よりも嬉しいものでした。
「中国が大好きで」と語る青谷さん
そんな時、1人の日本人観光客・青谷さんと出会いました。青谷さんはハワイで暮らしていますが、年に1度、3週間から4週間、中国各地をまわっているということです。今回、成都をおとずれたのも、『三国志』が大好きだからという理由。他にも見どころが沢山ある中国だけに、やっとここに来ることができた、と心から楽しんでいる様子でした。
青谷さんに「成都に来ることで、余震など不安ではなかったですか?」と尋ねたところ、「確かに不安だったけれど、旅行代理店がもう大丈夫だからと太鼓判を押してくれたから来た」とのこと。「それに、事故や災害はいつでも起きるもの。玄関から外に出ただけで事故に遭うことだってあるんだから、それを気にしていたら始まらない」と極めて楽観的な考え方をされていましたが、それは私も同感です。
海外へは四川大地震のその後の情報があまり伝わっていないかもしれません。悲劇的な側面があまりにも強く、特に日本の報道ではそれが強調されすぎているような気もします。しかし、現地では観光業はすでに再開しており、大勢の観光客が訪れるのを待っています。より多くの人が四川に来れば、それが四川の復興にもつながるのではないでしょうか。
青谷さんは、「ここに来て本当によかった」と言います。「本やDVDなどで、都江堰のことを"予習"しておいたけれど、その中身と実際に来て見ることは全く違う。こんなに大きくて広い場所だとは思わなかった」と驚いていました。
私もまさしく青谷さんの言葉と同じで、この都江堰に来て、武田信玄が戦国時代に手がけた治水工事の原形にあたるのでは?とそんなことも考えさせられました。もちろんここに来なければ、そんなことは思いつきもしなかったでしょう。
水利施設というと、日本人にとってはなじみが薄いかもしれませんが、雨が多く、急流が多い日本では、実は何よりも力が入れられている存在です。もちろん川や木々の緑に触れるだけでも楽しめる場所だと思います。成都へ行ったらパンダを見るだけではなく、この都江堰も訪れてみてはいかがでしょうか。
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