―ちょっと話したい話―
九十一歳まで生涯現役を通した日本の名女優の杉村春子さんとは二回お話したことがある。といっても、二回とも日中文化交流協会主催のパーティーの席上の立ち話だったが、とても印象に残っている。
北京の秋を語る杉村春子さん、右は筆者
一回目は、わたしが「まだ広島に行っていない」と話すと、杉村さんはわたしの目をじっと見ながら「ぜひ行ってください。日本人の平和の心をわかっていただけると思いますよ」と、ゆっくりと念をおすように話された。わたしは「ぜひ行ってきます」とお約束したのを覚えている。
初の日本新劇訪中公演のさい北京で、左より周而復、杉村春子、田漢、岸輝子、夏衍(1960年秋)
二回目にお話したときには、北京の秋が話題にのぼった。杉村さんは「北京の秋は素晴らしい、毎年でも行きたい。北京の秋には、いろいろ懐かしい思い出がいっぱいあるんですよ」と目を輝かせ、声を弾ませて話していた。
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