今年の政治協商会議の2237人の委員には、100名余りの民間企業の経営者も入っています。この人たちのことは、中国では、「新しい社会階層」、新階層と呼ばれ、政治に積極的に参加し、また、社会責任に対する意識も高まりつつあることから注目されています。
「政協委員として、私は決して裕福層のためにのみ発言してはならないと考えています。」
このように語ったのは、ハルビン出身の36歳の女性民営企業家・劉迎霞委員です。
3月8日に、人民代表大会堂では「新階層の人たちが語る社会責任」と題した記者会見が行われました。劉迎霞委員のほか、中国長者番付で125位にランクする徐冠華委員、百億元の資産を有する企業家の王健林委員、海外留学を終えて帰国した投資系銀行の経営者、韓方明委員、敏腕女性弁護士である劉紅宇委員も記者会見に出席しました。
中国で「新しい社会階層」と呼ばれている人たちは、主として、非公有制経済の経営者や技術者、管理者、もしくはフリーの形で働いている高学歴の人を指しています。職業で言いますと、民間企業の創業者や自営業者、弁護士、会計士、外資系企業の管理職、技術者、金融や証券のアナリスト、税理士、芸能人などのマネージャー、さらにはフリーランスとして働く人などなどです。
全国政治協商会議が提供したデータによりますと、現在、中国の「新階層」の人数は7500万人に達しており、この人たちは合わせて、およそ10兆元の資本を握っているとのことです。
「新階層」という言葉は、6年前の党の十六回党大会の報告の中で初めて登場しましたが、一つのまとまったグループとして政治の舞台にデビューしたのは、今年スタートした第十一期政治協商会議です。
3月2日、全国政治協商会議の呉建民報道官は記者会見で、政協委員の構成を紹介する時に、「委員には経済、ハイテク、文化、教育など各界の代表者だけでなく、民営企業家、弁護士、会計士などの新しい社会の階層の代表者もいる」と初めて言及しました。
中国の経済成長にとって、この人たちは大変重要な推進者であり、10兆元の資本を握っているだけでなく、直接的もしくは間接的に、全国の約3分の1の税収と4割の輸出入貿易、約7割の出版に貢献しています。2010年になれば、これらの非公有制経済は全国の税収において約半分を占めるようになるとも見られています。
「民営企業家が国の政治に参加することは、中国の経済、社会発展において必然なことで、中国共産党が時代と共に進み、思想を開放していることの表れです。」
47歳の浙江省の企業家・徐冠華委員はこのように語り、今後ももっと多くの新階層の人が国の政治に参加できるよう期待を示しました。
これに関して、銀行家の韓方明委員は、経済の発展と政治の進歩に伴い、新階層をも含めた国民の権利意識は日増しに高まり、政治に参加する意欲が強まっていることを指摘して、次のように話しました。
「新階層だって社会の一部分なので、私たちの政治参加は国民全体の政治参加の一部分なのです。現在の政治の枠組みはすでに新階層が利益を追求するためのチャンネルや場、そしてロードマップを提供してくれているのです。」
こうした委員たちの声に対して、第十期政治協商会議の?慶林議長は、「政治協商会議は新階層の人たちとの連携を深め、彼らの利益追求を重視し、彼らが利益を訴えるチャンネルを確保していく」と強調しました。
このような議長の発言を受け、民営企業家出身の韓方明委員は「今後、ますます多くの新階層の人が国のあり方に発言権を持つようになることを意味する」と期待を表しました。
新階層が国の経済発展において、たいへん重要な貢献をし、政治的な力も強まりつつある一方で、一部の民間企業の経営者は法令違反や、脱税、環境破壊、不正行為など社会的責任について良いイメージで見られないところもあります。これに対して、企業家出身の王健林委員は、このような現象が一部にあることを認めながらも、「偏った目で新階層を見てはならない。富みと雇用創出、輸出、税収を作り出したこの階層は、社会から理解と尊敬の念を得られるべきだ」と強調しました。
「一部の民営企業は急速に発展し、法令を良く遵守していますし、国際競争にも参加するようになっています。社会責任については民営企業家をも含めたすべての起業家に共通した問題です。」
また、新階層は政治参加において、「彼らの一番の訴求は、政策制定者に非公有制経済の発展により良い条件を作り出すよう求めていることにある」として、功利的なところがあることも指摘されています。
こうした指摘に対して、民営企業家の劉迎春委員は、「先に豊かになった階層として、誰よりも先に社会責任を果たすべきだ」と明言しています。
「民営企業として、まずは企業をしっかりしたものにすることが大事で、その上で雇用創出の拡大、従業員の労働環境と生活環境の改善及び各種福祉の確保に尽力していくべきです。」
中国が改革開放をスターとさせてから30年の間に、様々な面で変化が起きました。政治はこうした変化に着目して、それを取り入れる形で変わってきたといえます。
一方、新階層の功利的だという指摘について、様々な階層の人は自分たちの代表している人たちのために、利益を訴えることは理解できる行動ですし、このような権利の主張が許されるようになったのも社会の大きな進歩だという見方もあります。中国の改革開放の変化は、こうしたところにも現れていると実感しました。(整理:Yan)
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