ーー三井住友海上火災保険株式会社・小島信之駐中国総代表に聞くーー
Q.三井住友海上と中国保険業界のこれまでの交流の概要をご紹介下さい。
A.1981年に、北京に最初の事務所を設置して以来、26年間、中国保険業界の発展のために努力して参りました。具体的には、当社の長年の経験で養ったノウハウや、保険の最新情報などをレポートやフォーラム等を通じて提供してきました。それから、北京五輪や上海万博などの国際イベントに備えた、リスクマネージメントや危機管理に関するセミナーもその一環です。このほか、各省、市に根付いた提案も行っております。本年、当社の江頭社長が広東省経済顧問を拝命し、「自動車保険の革新と広東省の交通変革」や「保険自由化と保険会社の経営領域拡大」について提言をしたこともその一例です。当社の上海支店が当局の批准を頂き、12月1日より現地法人「三井住友海上火災保険(中国)有限公司」として開業できたことは、これまでの取り組みを評価していただいた結果だと理解しています。
Q.中国との交流・協力にどのような思いをかけているのでしょうか。
A.中国に進出している日本の企業はたくさんあり、これらの企業向けの保険に関する各種サービスの提供が求められています。それと同時に、損害保険市場の巨大な潜在力にも注目しています。中国の損害保険市場の発展があってこそ、弊社の事業も同時に発展できると考えていますので、今後も引き続き様々な形で中国保険業界に貢献していきたいと考えています。
Q.先月末、西南財経大学との共催で、成都市で第8回国際保険フォーラムを開催されましたが、提携のキッカケは何でしたか。
A.西南財経大は中国の金融・保険に従事する優秀な人材を輩出する名門校です。今後の中国保険業の発展のために、人材育成、教育の観点の面で貢献すべく、1995年12月、旧住友海上の西中国総代表(当時)が同大学を訪問し、国際交流センター(住友苑と命名)建設への協力を申し入れました。それが交流のスタートでした。
その後、1998年11月に、第1回セミナーを開催し、以降01年、06年を除いて毎年実施してきました。
Q.今年のフォーラムは「保険資金運用のチャンスと挑戦」をテーマに開催されましたが、このテーマを選んだ理由はどんなところにあるのでしょうか。
A.毎回、中国保険業界で注目されているテーマを取り上げています。今年は、保険会社の資金運用の幅が広がるなど、大きく変動した年でした。今から12年前の1995年では、中国の保険業総資産は957億元に過ぎなかったのが、現在では2兆5000億元と大きく膨らんできました。資金運用についても、以前は銀行預金、債権などに限られていましたが、現在は規制緩和により、海外市場や株式への投資などもできるようになりました。運用の幅の拡大に伴い、リスクも増え、確実に収益を上げることが中国保険業界の強い関心事となっています。今回のフォーラムのテーマは、こうした背景の中で、中国保険監督管理委員会と相談して最終的に決めたものです。
Q.フォーラム開催の意義をどう考えていますか。
A.日本、中国の保険業界が交流することで、中国保険業界がさらに発展することに繋がると考えています。そして中国の保険業界が発展することで、我々も同じように発展できると思っています。保険業界関係者はもとより、若い大学生も参加することにより、将来の中国経済をささえる人材が増えることを願っています。
Q.三井住友海上の中国での事業展開の概況は?
A.2001年5月に、当局の営業免許を得て開設した上海支店は、順調に業績を伸ばすことができ、開業3年後に黒字に転化することが出来ました。2006年の収入保険料と利益はそれぞれ32億円と2億円であり、外資損害保険の中で第3位、2007年に入っての増収率は外資企業No.1 をキープしています。今般、当局の許可を頂き、12月1日より現地法人「三井住友海上火災保険(中国)有限公司」として正式開業しました。上海本社の中国現地法人以外には、中国大陸に9ヶ所の事務所を設置しています。今後の事業展開について、当局から許可をいただければ、主要都市に中国現法傘下の支店を順次設立していきます。
現在のお客様のうち、中国の国内会社の割合は取り扱い保険料の約10%弱ですが、今後、これを20-30%と引き上げていきたいとも考えています。我々は決して日本の会社だけを相手にしたいのではなく、中国国内で認められる、総合サービスができる外資の会社として、中国の会社にも寄与していきたいと考えています。
Q.中国市場で中国本土の企業やその他の世界保険大手と、ウィンウィン関係が構築できるとお考えですか。
A.中国の損保市場は30%を超える伸び率でマーケットが拡大しています。巨大な潜在力を有する中国で、日本の企業を引き受けるだけでなく、中国のクライアントの方も引き受けることは、日本企業としてではなく、グローバルな会社として、リスクマネージメントを含めた総合的なサービスを提供したいと考えています。顧客も中国だけでなく、日系企業や外国の企業に総合的なサービスを提供するグローバルな会社に大きくしていきたいと考えます。そうした中では、中国の企業と日本の企業の垣根は特に考えておらず、逆に中国に出ている世界の大手の保険会社との協力、連携も含めて、大きく成長していきたいと考えています。中国市場で、ウィンウィン関係が構築できると思います。(取材・原稿整理:王小燕)
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