「温家宝首相訪日は両国の経済関係に大きな貢献」と期待
中国、日本にとって最大の貿易相手国へ
中国の温家宝首相は4月11日から13日にかけて、日本を公式訪問し、日本の安倍首相と中日戦略的互恵関係の中身を確認し、また、一連の経済協力事項で合意に達しました。温首相の訪日と中日首脳会談が、両国の経済や貿易関係の発展にもたらす影響や、中日間の経済相互依存関係、貿易、直接投資の最新動向について、JETRO・日本貿易振興機構北京代表処の柴生田 敦夫(しぼおた・あつお)所長にお話を伺いました。
Q 温家宝首相の訪日が、両国の経済発展に与える影響についてどう見ていますか。
A まことに意味深いものだと考えています。安倍首相との会談では、昨年10月の日中首脳会談で合意した戦略的互恵関係の具体化を促進するということで一致しました。経済面に関しては、日中ハイレベル経済対話の年内開始や、エネルギー閣僚政策対話の開催が合意されました。このほか、農業分野では、日本産の米の輸出再開に合意しましたし、また、羽田空港と上海の虹橋空港の定期チャーター便も開設されることになりました。さらに、知的財産権、中小企業、金融といった分野でも協力関係を一層強化していくという、幅広い合意が日中共同プレス発表に盛り込まれています。今後、こうした合意事項がより具体的に進展していけば、日中両国の経済関係に良い影響をもたらし、両国の経済発展に大きく貢献していくものと期待されています。
Q 経済に関する一連の合意は両国の貿易に対し、どのような効果が期待できるとお考えですか。
A 貿易面について、現状を申し上げますと、日本側の発表したデータでは、今年の1~2月の貿易総額は前年同期比で21.5%増の3052億ドルになっています。
2006年の一年間を見た場合、日中の貿易総額は11.5%増でしたので、それと比べますと、今年の日中貿易は全体として、比較的、順調なスタートを切っているのではないかと思われます。具体的に申し上げますと、日本から中国への輸出では、全体の約3割を占めている電機機器は前年同時期と比べて約40%増と、非常に好調となっています。中国から日本への輸入を見ると、やり4割のシェアを占めている機械・機器は同じく前年同期と比べて、15.5%と堅調に伸びています。特に、携帯電話などが大きく伸びています。
全体として見ますと、これは今年上半期の見通しですが、今のところ、日中両国の経済がいろんな意味で大きく減少するというリスクは比較的小さいと思われます。日中貿易には個別的な問題がありますけれども、今、そんなに大きい摩擦の問題はありませんし、さらに、今回、日中間で合意されたこのような会合等々が進めば、いろんな意味で、今年の上半期は日中間の貿易がおおむね堅調に、良い形で進めるだろうと思われています。
実は、日本と中国の貿易は、香港を含めると、2004年には日米の貿易額を上回っていまして、日本にとって、中国は第一の貿易相手国になっています。また香港を含めない場合でも、日中貿易は2006年に、2113億ドルに達していまして、一方で、日米貿易は2137億ドルと、その差はわずか25億ドルに縮まっています。今年、2007年一年間では、中国本土だけでも中国は日本にとって、第一の貿易相手国になるという可能性が高まっています。
来年以降も日中間の経済相互依存関係の深化を背景に、堅調なペースで日中貿易の増加が続くと期待されています。あと、今回のハイレベル会合等等でまたいろんな問題が話し合われると、より一層、日中間の貿易が力強く続くと期待されています。
Q 両国の経済関係が絶えず緊密になっていく中で、両国の経済依存関係をどう見ていますか。また、日本サイドは、中国の経済発展に対して、どのような点を注目していますか。
A 日中貿易が堅調なペースで進んでいくということは、両国の安定的な経済発展には非常に重要であろうと思っています。とくに、日中経済の緊密化を背景にして、中国経済の動きが日本経済に与える影響もいろんな意味で高まりつつあります。
日中間の経済相互依存関係が高まっている中で、中国経済の持続的、かつ、安定的な発展が中長期的にも継続されていくかが注目されています。中国経済は2008年の北京のオリンピック、2010年の上海万博まではおおむね堅調に成長が続くと見ていると見ている人が多いと思っています。2010年以降もこうした形で経済成長が続いていくかどうか、それがどういう形で進んでいくかという点で、日本にとって高い関心を呼んでいるわけです。
たとえば、中国の場合、資源、エネルギーの問題、環境問題、都市と農村、地域間の格差、三農の問題、人民元の切り上げといった金融問題など、持続的かつ安定的な経済成長を阻害しかねないような難しい構造的な問題も色々抱えておりますので、これらがどのように解決されるのかということに非常に関心が高いではないかと思います。 (続く)
|