ー日本航空北京支店・深田信総代表の取材ー
1974年の『日中航空運輸協定』 によって、中国に乗入れて32年。現在、香港を含めて中国の13の都市と空路を開設し、発着便数は週271に達しています。この本数は、JALがひとつの国と結んだ航路の中では、断トツでトップを占めています。また、昨年は、世界の他の地域の席数を全体で10%減らしたにもかかわらず、唯一、中国市場向けの席数供給計画は20%ほども増加しました。中国線の昨年の旅客輸送数は182万人で、JALの全世界での旅客輸送数(2006年は1500万人)の13%を占めています。中、日、米など世界の航空大手がひしめく中国線市場で、確固たるシェアを保っています。
深田信総代表は、「32年の間、一貫して需要の拡大に力を尽くしてきた。日中関係そのものの安定化や、両国の経済発展と貿易拡大こそが航空運輸の土台だ」と強調しています。
中国線の各航路の中でも、最も利用客が多いところは上海です。日本の大手企業が数多く進出しているため、長期滞在の日本人の数だけでも4万人以上を数え、輸送量は北京の3.5倍にも達しているといいます。
中国人の訪日には、個人ビザを申請する上で制限があることなどから、現在、乗客の7割が日本人となっています。しかし、両国の経済往来の緊密化と中国人観光客の増加を背景に、今後は中国人利用客の大幅な増加を見込んでいます。
「アジアは様々な経済関係や、人の往来が盛んになりつつある。中国、インド、ベトナム市場が特にそうだ。中でも、中国が一番経済的に発展している。それに応じて、人、モノの輸送も増えている。」
競争が熾烈化する中国市場で勝ち抜くため、中国人旅行客が利用しやすいサービスの導入で創意工夫をしてきました。具体的には、成田や関西空港のカウンター、それに機上で中国語が話せるスタッフの配備、中国語HPの開設など中国語によるコミュニケーションの強化、また、中国の銀行との提携によるマイレージプログラムの導入、中国語携帯SMS・ショートメッセージでの離着陸時刻の問い合わせなど、中国市場に根付いたサービスの提供に工夫をしています。今後、中国人ビジネスマンを対象にしたマイレージプログラムの会員数を20?30万人に増やしていくことを目標に掲げています。
今後は、中国国内の航空会社とコードシェア(共同運航便)により、地方都市間のアクセスを強化していくということです。また、政府間の合意による羽田・虹橋空港間の直行便開通に期待を寄せています。
「羽田とソウルの金浦(キンポ)を結ぶチャーター便の航路が既にスタートしている。羽田・上海虹橋の直行便が開通すれば、すぐにも飛びたい。そうなれば、日帰り旅行が可能になるし、日本と中国の華東地区との連絡がより便利になる。」
一方、JALはこれまでにも様々な日中交流イベントの協賛に、意欲的に取り組んできした。中日国交正常化35周年を記念した日中スポーツ文化交流年の今年、目白押しするイベントについて、深田総代表は「色々協賛していきたい。今年は今までになかったぐらいに、ものすごく忙しい一年になりそうだ」と展望します。「確かに、航空会社は人やものを運ぶ会社だ。しかし、文化や交流の動機を一緒に運ばないと、人もモノも動かない。イベントや交流に協力することは、我々の本来の仕事だと思っている」。そこには、需要拡大の創出に努めてきた32年間の姿勢が貫かれています。(王小燕取材)
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