遼寧省東部の山岳地帯では、起伏した山並みが続き、草木が青々と茂ります。
この緑の海で、最も注目を集めているのは、新賓満族自治県から東南へ50キロのところにある鋼山です。鋼山は、遼寧、吉林両省の三県に跨る境界にあり、「鷹の嘴」と呼ばれるその最高峰は、海抜1347メートル、遼寧省で最も高い山です。鋼山は、長白山系に属し、植物の種類が豊富で、41科79属98種もあります。また、山には、ノロジカ、イノシシ、アナグマ、テンなどの野生動物が生息し、漢方薬に使われる植物も豊かです。ここは、省クラスの自然保護区とされています。
6月末のある日、記者一行4人が鋼山の麓にやってきました。山はいろいろな植物に覆われています。山々に囲まれた戸数100戸足らずの小さな村は、落ち着いて静まっています。こっちの村民、朱何輝さんが、案内してくれました。朱さんは、「植物がたくさんあります。今、私が寄りかかっているのは、ヤマモモの樹です。あれは、クルミ、棗、そして、あれは、葡萄です。漢方薬なら、もっと沢山ありますよ」と紹介してくれました。
ここの土壌は肥沃で、漢方薬になる植物が沢山育ちます。その中でも最も有名なのは、人参です。昔から、毎年多くの村民が、この神秘的な色彩に満ちた人参を取りに来ます。
海抜1000メートルまで上ると、見渡す限り、朝鮮松、白樺、キハダなどがあり、その内最も貴重なのは、木蓮です。朱さんは、「木蓮の花が咲いたら、すごくいい香りがします。現地の人々は皆、これを誇りに思っています」と語りました。
木蓮は、春の末から夏の初めにかけて咲きます。花は人の拳くらい大きく、雪のように真っ白で、そのしなやかで美しい姿から、「山の中の皇后」と呼ばれています。
頂上に近づけば近づくほど、木は低くなります。一気に頂上まで登ると、私たちの気持ちはたちまち爽やかになりました。空は、まだ曇っていましたが、見渡しは大変良好でした。遠くまで、山は延々と起伏して、見渡しきれません。光が雲の隙間を通って、屈折した後、いろんな色彩が現れました。山は雲に連なり、雲は山を囲み、仙境みたいな風景を描きました。目の前の絶景を満喫して、大自然こそ何と素晴らしい絵師なのかと賞賛の声をあげざるを得なくなりました。
途中、ガイドの朱何輝さんがずっと、鋼山について紹介してくれました。朱さんは、鋼山のことについては、家の宝を数えるように何から何までよく知り抜いています。話を聞いているこちらは、突然、一つの疑問が頭に浮かんできました。「山の中で30年近くも生活して、飽きませんか」という私の質問を聞いた朱何輝さんは、しばらく沈黙した後、「もうここの生活に慣れています。ここは、空気もいいし、景色も綺麗です。何でもあります。ある人は、退職したらどこに行くのかと私に聞きましたが、私は、ここに残って、ここで老後を過ごします」と語ってくれました。
朱何輝さんは、山に対して深い愛情を感じています。山のために何を支払っても、彼には悔いはありません。鋼山は、もう彼の生活の中でなくてはならないものになっているのです。ここでは、朱何輝さんだけでなく、皆が彼と同じように山を深く愛しています。取材した私たちは、今になって初めてそのことが分かるようになりました。このように山を愛する村民がいるからこそ、鋼山はいっそう美しさを増していくのです。
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