中国には、現在、2億人近くの農村出稼ぎ労働者がいます。建築の工事現場や、炭鉱の坑道、各種工場の生産ラインで、働いています。農村出稼ぎ労働者はすでに中国経済の発展に欠かせない重要な力となっています。
では、生まれ故郷を離れ、はるばる都会という「外の世界」に来ている彼らは、今、どんな生活をしているのでしょうか。スポットライト、今回は農村出稼ぎ労働者の生活についてご紹介しましょう。
北京市西部のある建築現場で、陳強生さんに出会いました。陳さんは今年38歳で、中国南西部の広西チワン族自治区から来た出稼ぎ者です。妻と2人の子供を古里に残し、単身で北京に来ている陳さんは、家族を養うため、出稼ぎに来たのです。「上の子はもう中学生だが、下の子はまだ僅か4歳だよ」と陳さんは家族のことを懐かしく思い出しながら話してくれました。しかし、現実に陳さんはやや失望させられました。
今、中国には2億人近くの出稼ぎ労働者がいるということです。陳さんと同じような境遇にある人は少なくないでしょう。政府は労働者の合法的権益、特に農村出稼ぎ労働者の基本的な生活の保障を一貫して重視しているものの、労働時間が長すぎること、労働環境が悪いこと、医療保障がないこと、子供の就学難など、出稼ぎ者たちは依然としていろいろな困難に直面しています。
農村出稼ぎ労働者の状況を更に改善するため、中央政府はこのほど『農村出稼ぎ労働者問題に関するいくつかの意見』という文書を発表しました。それによりますと、出稼ぎ労働者問題の解決を国の全体発展計画の中に位置づけています。
国家労働社会保障省の胡暁義次官は国務院農村出稼ぎ労働者活動連合会弁公室の主任でもあります。胡主任は長い間、農村出稼ぎ労働者問題に注目し、「この新しい意見書は系統だっており、将来性も持っているものだ」と語りました。
「この文書は全面的でかつ系統だったものだ。文書は合わせて40項目があり、そのうちの32項目は農村出稼ぎ労働者の具体的な問題の解決に関するものだ。例えば、労働関係問題や、給料、住宅、子供の教育問題や、公共衛生問題などが含まれている。この文書は過去の政策を踏まえて、関連措置をさらに具体化した」と語りました。
意見書の内容は農村出稼ぎ労働者が関心を寄せる問題にも及んでいます。先ほど話した陳さんは給料が安いことに不満を持っているようです。この意見書によりますと、これから、各地で最低賃金制度を実施し、給料の最低基準を合理的かつ適切に決定し、出稼ぎ者の給料が低い問題を確実に改善していくことを政府が要求しています。
また、出稼ぎ者にとって、もう一つの切実なのは居住問題です。新しい意見書は「各級政府が監督と管理を強め、基本的な衛生条件や安全条件に基づいて出稼ぎ労働者の居住条件を整える。また、出稼ぎ労働者の居住問題を都市の住宅建設発展計画に位置づけること」も求めています。
その他、出稼ぎ労働者の医療保障問題も盛り込まれています。今後、条件を備えている都市は、農村出稼ぎ労働者を都市部職員の基本医療保険システムに組み入れることを求めています。また、出稼ぎ者の所属企業や職場は出稼ぎ者を労災保険に加入させ、国家の職員休暇規定に基づいて出稼ぎ者にも休暇の権利を与えることなども求めています。
意見書は出稼ぎ者の現実的な問題に注目し、彼らに待遇改善の希望を与えました。範配洲さんは北京にいる出稼ぎ者で、今年47歳です。
「政府は僕たち出稼ぎ者のために、この意見書を発表した。これは我々の利益を保障してくれるものだ。この意見書の実施はきっと順調で、僕たちに自信を与えてくれるだろう」と語りました。
意見書は社会学者たちからの注目を集めています。程漱蘭さんは中国人民大学の農業農村発展学院の教授で、博士の指導先生でもあります。程さんは長い間、ずっと農村出稼ぎ労働者問題に関心を寄せています。「この意見書の発表は重要な意義がある」と程さんは語りました。
「この文書の発表は農村出稼ぎ労働者問題における革新的なものだと言える。農村出稼ぎ労働者問題が解決されれば、全ての労働者は平等となり、競争を促すだろう。競争が激しくなれば、労働者たちは自分の素養や効率、能力の向上を図り、より良い福祉や発展のチャンスを求めるため、より一層仕事に励むことになるだろう」と語りました。
多くの農村出稼ぎ労働者にとって、都会というのはまるで外の世界のようです。外の世界はリスクもありますし、新しい希望とチャンスもあります。多くの出稼ぎ者は期待半分不安半分の気持ちを抱えて、この外の世界への行く道を歩みだしているのです。全ての出稼ぎ労働者が外の世界で自分の夢を適えることが出来るように、祝福します。(担当:劉叡琳)
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