「瓦猫」は、その名の通り、煉瓦で作られた猫で、雲南省北西部にある大理や麗江辺りの民居の屋根でよく見かけるものです。中国では、紀元前3世紀の漢の時代、屋根の上に、家内安全と幸福を招くという瑞獣を飾る習慣が生まれ、雲南省北西部では、この習慣が今もなお守られています。
この地方の少数民族の間では、古くから虎のことを「大きな猫」と呼んでおり、瓦猫のことは「幸福をもたらす虎」という意味の「降吉虎」といい、瑞獣の一種、いわば「神様の使い」として信じられてきました。家の屋根の真ん中に、外向きに鎮座する瓦猫は、その顔つきが獰猛であればあるほど、邪悪なものに食らいつくので魔よけの力が強くなり、また口の開き方が大きければ大きいほど、それだけ富を引き寄せるので、その家庭に幸せをもたらしてくれると言われています。
「猫福」とは、30年以上も瓦猫を作り続けてきた達人、コウ金福さんのニックネームです。大理市鶴慶県の趙屯村に住む郜さんは、瓦猫づくりの第一人者として高く評価され、また、瓦猫を後世に伝えていく工芸作家として、雲南省文化庁から「雲南省民族民間芸術作家」に認定されました。
「猫福」は、毎年、質のいい泥をおよそ35トン買い込み、瓦猫作りにあてています。
瓦猫の製作は、まず瓦猫を載せる台を造ることから始まります。台には、屋根に載せるためのアーチ形をしたものと、工芸品として売られる平らものの2種類があります。この台は鋳型を使って造り、出来上がった台には、四つの穴が空けられます。続いて猫の四本の足を作り、台に空けた穴に入れます。そして中ががらんどうの胴体を足に取り付けます。さらに胴体のおしりに小さな穴を開けて、気の向くままに作ったしっぽを付けます。最後は、この「瓦猫」に魂を入れるといわれ、最も創作力が求められる顔の製作です。歯茎まで見えるほど大きく開いた口に舌、そして4本の牙と、顔つきはかなり凶暴です。でも凶暴な顔つきこそ、魔よけの力も大きく、縁起がよいとして喜ばれるのです。
瓦猫の製作中、何回も日にさらし、少し硬くしてから、次の工程に入ります。形が出来上がってからも、完全に乾くまで干します。
続いては、かまどに入れて焼きます。火の加減で、焼き上がった時の色が異なります。
「猫福」は家屋用の瓦猫のほか、これまでに空飛ぶ猫や二つの頭を持つ猫、6層もの塔の形をした猫の群れなど200余りを作っています。小さいもので4ー5センチ、大きいもので120センチ以上もあります。中国国内だけではなく、海外からも注文が頻繁に入ってくるそうです。(編集:GK)
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