「中国語は難しい」と思っている人は多いでしょう。中国北西部の新疆ウイグル自治区在住の張寧教授は、「中国語そのものはそんなに難しくない。問題は中国語を教えている先生にある」と違う考え方を示しました。このほど、張寧教授が執筆した中国語の教科書『100小時学漢語(100時間で中国語を学ぼう)』が新疆人民出版社より出版されました。
今年、定年退職した張寧教授は、かつて「新疆教育学院学報」の副編集長も務めていました。10年前、張寧教授は、シンガポールを旅行した時、ドイツから来た1人の若者と知り合いました。そのドイツ人は、中国語を勉強しているところで、「中国語は難しい。まるで悪魔のようだ」とちょっと大げさに文句を言ったそうです。張教授はこの言葉にショックを受けつつも、地元の少数民族の子供たちを思い出しました。確かに、中国語を第二の言語として勉強している子供たちは、数年で中国語が話せるようになりますが、「読む」力と「書く」力は、なかなか伸びてきません。よく考えてみると、表音文字を持つ人たちにとって、中国語の勉強で、一番むずかしいのが、やはり発音を示す「ピンイン」と関連のない漢字の書き方だと分かりました。
どのようすれば、漢字がより覚えやすくなるのか、張寧教授は知恵を絞りました。そして、漢字の成り立ちに目を着けました。漢字の成り立ちには象形・指事・会意・形声・転注・仮借 の6つがあげられますが、中でも多いのが、物の形をかたどって字形とした象形と、音を表す字と意味を表す字を組み合わせて作る形声による漢字です。新中国成立後、多くの漢字が簡略化された漢字・簡体字になりましたが、どのようにして漢字が作られたかをたどることはできます。「国が指定した常用漢字2500文字と次常用漢字1000文字を1字ずつ、分かりやすく解釈していけば、覚えやすくなるだろう」と思いつき、この作業に力を注ぎました。
例えば、「愛」という漢字は、中国語では上の部分は日本語の漢字と同じですが、下は日本語では「心」と、「変」という字の下の部分を書きますが、中国語では「友」だけです。張寧教授は、「(上の部分は、)私たちのお母さんの目線は下に向いている(ように見える)。懐には子供(中国語では子供を「小朋友」ともいいます)を抱いている」と説明しています。また、「癌」という漢字は「病の細胞に、3つの口が出来た。山のように大きくなって、人の命を奪おうとしている」と、まるでお話を語るように説明しています。
9月9日、張寧教授は、新疆教育学院で講座を開き、25人の少数民族の教師を迎えました。講座が始まる前にまず、25 人の教師に対して漢字21文字が正しく書けるかどうかテストが行われました。その結果、25人のうち、18人が、正しく書ける漢字が10文字に満たなかったです。その後、張寧教授は、これらの漢字を分かりやすい「張寧流」で説明したところ、講座に参加した教師たちの間に新鮮な驚きが広がりました。1時間後の2回目のテストで、17人の書き方はすべて正解となりました。新疆の和田から来た小学校の先生、アイグリさんは、1回目のテストで正解した漢字はわずか7文字でしたが、1時間後にはすべてクリアしていました。アイグリさんは、「中国語を勉強してもう10年経ちますが、なかなか上達できませんでした。特に漢字を覚えるのが難しくて、何度暗記してもすぐ間違えてしまいます。今日は、わずか1時間でこんなに多くの漢字を身に付けることができるとは思いもしませんでした。これは中国語を勉強するのに良い方法なので、自分の生徒たちに教える時に使うつもりです」と話しました。
これは、漢字との接点がまったくない言葉を持つ人たちにとって、中国語を学ぶよい方法だと思いますが、漢字を使う日本人にとっては、中国語の難しさは別なところにあるかもしれません。(編集:GK)
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