旧暦の8月15日(今年は9月14日)は、中国の伝統的な祝日「中秋節」です。今年からこの日は法定祝日となりました。
中国では漢民族のほか、55の少数民族が暮らしていますが、そのうち20余りの民族にも「中秋節」を過ごす習慣があります。ただ、その日に行う行事は民族ごとに違います。ここでその中から、ミャオ族の「跳月」、タイ族の「拝月」、トン族の「月の野菜を盗む」をご紹介しましょう。
ミャオ族の「跳月」ーー月の下の踊り
ミャオ族は、中国の南部の貴州省や雲南省などに住む少数民族です。中秋節の夜、村の人々は林の中の空き地に集まり、月の光を浴びながら、集団で踊る習慣があります。
ミャオ族にはこんな伝説があります。「月亮(中国語で月の意味)」という男性と「水清」という女性がいました。月亮は忠実で勤勉な若者、水清は99の州からの99人の若者の求婚を断り、それほど月亮のことを愛していました。その後、水清は太陽が作り出した様々な難関を乗り越え、月亮と結ばれて、幸せな日々を送ることができました。この二人の幸せを祝い、ミャオ族の人々は代々、中秋節の夜に必ず民族舞踊を踊ります。この習俗を「跳月」といいます。若者たちは、「跳月」の際、お互い気に入った相手に気持ちを伝えあい、月亮と水清と同じように、幸せな将来が訪れるように祈ります。
タイ族の「拝月」
雲南省に住むタイ族には、中秋節の夜、「拝月」、つまり中秋の名月に向かって礼拝する習慣があります。
タイ族の言い伝えでは、名月は天の三番目の息子岩尖が生まれ変わったものとされています。岩尖は、勇敢な青年で、かつてタイ族を率いて敵を打ち負かしたことがあり、タイ族の人々から尊敬されていました。彼は亡くなった後、柔らかな光を放つ名月となり、闇の中にいるタイ族に光明をもたらしています。
中秋節の日、タイ族の若い男性たちは、朝早く起きて山を登り、鳥を狩り、女性たちは、川や海に行って魚を取り、豪華な夕食を作ります。さらに食卓の四つの角に、もち米で作ったお餅を置き、その上に線香を立てます。月が出ると、線香に火を点し、家族全員で名月に向かって礼拝をします。その後、岩尖に敬意を表すため、空に向けて鉄砲を一回撃ちます。それから、一家で食卓を囲み、食事をしたり、おしゃべりをしたりして楽しいひと時を過ごします。
トン族の「月の野菜を盗む」
湖南省に住むトン族には、中秋節の夜に「月の野菜を盗む」習慣があります。
伝説によると、中秋節の夜に、月にある宮殿に住む仙女たちが、人間の世界に降りてきて、清らかな水を世界の隅々にまくそうです。仙女がまいた水はみんなのもので、その水を浴びた野菜もまたみんなのもの、それで人々は勝手に他人の畑に入り、野菜を取ってもいいとされています。そのためこの習慣が「月の野菜を盗む」と呼ばれています。
この日の夜、トン族の娘たちは、きれいな傘をさして、心に想う若者の畑に行き、野菜などを取ります。そして、「おーい!野菜を採ったよ!家へお茶を飲みにきて!」と大声で伝えます。このとき、二つ並んで実った瓜やインゲンなどが見つかったら、縁起がいいと言われています。また、既婚の女性たちも他人の畑に入り、大きな瓜やよく出来た枝豆などを一生懸命探します。この瓜や枝豆が、子供たちの健やかな成長を象徴するものだからです。また男性たちも他人の畑に入って、野菜を取っていいことになっていて、仙女たちからの恵みを受けることができます。ただ、男性は取った野菜を家に持ち帰ることができず、野外で茹でるなどして食べなくてはなりません。(編集:GK)
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