今日は清の時代のお話「県令と盗人」と蚊にまつわるお話「小さくなった蚊」をご紹介しましょう。
まずは「県令と盗人」です。
「県令と盗人」
乾隆年間、秀州府の崇徳県で章清という読書人が県令を勤めていた。章清は若いが学問があり、それに私心と後ろぐらいところがまったくなく、ここの県令となってから数年の間に、地道な仕事をし、多くの厄介なことをうまく処理し、民百姓は穏やかな日々を送れるようになったので、評判はかなりいい。
当時、隣の県では盗人が多く、特に金持ちや地元の役人たちが多くの被害を受けて困っていた。これを聞いた都の大官は章清をこのとなりの県の県令になるよう命じ、この難しい状態の処理に当たらせた。そこで章清は一人でこの県に向かい、これまでと同じように私心なく事柄の処理に取り組もうとした。ところが不思議なことに、章清が県令になったと聞いたのか、それまで世を騒がしていた盗人たちはその日から姿を消したように盗みをやめ、それにごろつきども、誰に命じられたのか、悪さをしなくなったので、町や村にはびくびくしなくてもいい日やごたごたのない日が訪れた。
それから数ヵ月後に、章清は家族をこの県に移させ、それから三年の月日がたった。つまり、章清は任期を無事に終えて、舟でふるさとに戻ることになったのだ。
この日、地元の民百姓たちは、川岸に来て章清を見送り、それは名残惜しそうだった。中には涙を浮かべる人々もいた。と、そのとき、急に何者かが章清に風のように近寄り、章清はふと顔を触られたような感じがしたので、慌てて右手で顔を隠そうとしたが、その弾みで章清は船から川へ落ちそうになった。幸い、船頭が助けてくれて落ちなくて済んだが、気がついてみるとかけていた眼鏡がなくなっている。
「あ!私の眼鏡が!」と章清はあまりに急なことなのでびっくりして慌て、また川に落ちそうになった。
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