「あの灰などをお茶の木にまいてしまったのなら仕方がない。おばあさん、これで昨日の話はなかったことにしてくれ。すまんな」
こういって旅人はついてきた男たちを連れてどこかへ行ってしまった。
こちらばあさん、これを見てがっかりしたものの、どうせ夢だったんだろうとすぐあきらめてしまい、元気を取り戻して米をたき、ご飯だけで粗末な正月を迎えた。
さて、正月も過ぎ、やがて春になった、ばあさんは茶畑に行ってみたが、今年はどうしたことか、いつもより茶の葉が多く、色もよい。そして葉をとってお茶を沸かして飲んでみると、なんととても香りがよく、かなりおいしい。驚いたばあさん、こんなおいしいお茶を自分だけ飲むのではもったいないと、隣近所にも飲ましたところ、みんなもそのおいしさに喜び、こんなすばらしいものができたのだから、ばあさんの十八本のお茶の種を使って苗木を作り、それを近くのゆるい山肌にみんなで植えることにした。
こうして数年後にはこの山肌にばあさんの茶畑でとれるお茶とまったく同じお茶がたくさんできた。そしてここのお茶はとてもおいしいことからすぐに名が知れ、その売れ行きはすごいものだった。もちろん、ここのお茶は村の名前を取って「竜井茶」つまりロンジン茶となったそうな。
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