「仕方がない。眼鏡はもう一つ持っているのであきらめるか。しかし、さっきのはいったい誰だろう?何の目的で私を脅かし、眼鏡を取っていったのだろう?」
章清は首を傾げたが、もう船を出さなければならないので、岸辺の民百姓に手を振って別れを告げた。こうして章清と家族らを乗せた船は川を下り始めた。
さて、この日の夜、船はある県境の町の港にとまり、章清らは岸に上がり、町の宿屋で一泊することになった。で、次の日の朝、章清が船に乗ると、船に積んであった荷物が入った十幾つもの木の箱がなくなっている。
「何ということだ。私の全財産が盗まれた。何という盗人どもだ。私がまだこの県を離れていないというのに、私のものを狙った盗人が現れたとは!本当にいまいましいやつらだ!ということは昨日、私の眼鏡もこの盗人たちに盗まれたのか!!どうしよう!?困った!!どうせ、盗人どもはもうとっくにどこかへ逃げてしまっただろう。これじゃあどうにもならん」とがっかりした章清はやがて落ち着きを戻し、途方にくれている船頭に船を出すよう命じた。
こうして気を落とた章清が乗った船は三日後に、自分のふるさとの港に着こうとしていた。そこで章清が船先にたって懐かしいふるさとの景色を眺めていると、何と港の埠頭には木の箱は積まれているではないか?
「ありゃ?なんだ?もしかしてあの木の箱は私が盗まれた物じゃないか?」
こう思った章清は船を急がせ岸に着くと飛び降りて、かの木の箱が積んであるところに来た。よく見るとそれは盗まれた自分の箱だった。章清は早速迎えに来ていた家の下男に箱を開けさせたところ、ものは何一つなくなっていない。それにある箱に、数日前盗まれた眼鏡までが入っていた。喜んだ章清がふと見ると、眼鏡の下に手紙があった。それにはこう書いてあった。
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