次は蚊にまつわるお話「小さくなった蚊」です。
「小さくなった蚊」蚊子精
むかしむかしそのむかし、蚊には羽がなく飛べなかった。それに体は牛のように大きく、毎晩出てきては人間を餌とし、それも若い人間ばかりを食べていた。
ある夏、蚊は一つの村を東から西へと一軒一軒まわり、その家の若者ばかりを食べ、とうとう次の日の夜には西の端の家にやってくることになった。この家にはじいさんとばあさん、それにその息子とその妻がいて、若いといえば、一人息子がおり、それも若い娘を妻に迎えたばかり。蚊がこの若者を食いに来ること知った親たちは、大事な跡継ぎを食べられてしまうと嘆いた。そこでじいさんが怒っていう。
「化け物めが!お前が孫を食べてしまえば、我が家はもうおしまいじゃないか!どうしてそんなひどいことをするんだ!!」
そばにいた若い妻はこれを見て涙を流しながらいう。
「おじいさん、おばあさん、おとうさん、おかあさん!蚊がどうしても若い人間を食べるというのなら、このわたしを食べさせればいいわ。そしてこの人がまた嫁をもらえばいいのですよ。」
これを聞いた親たちは、まったくその通りだと思ったが、それでは若い妻がかわいそうだし、何とかしようと考え、やがていいこと思いついたらしく、ひそひそと相談し始めた。。
さて、次の日、若者とおじいさんや父親などがに車を引いて町に出かけ、牛、羊と豚の肉、また、なまず、鯉などと油、塩、味噌などを買い、それに強い酒を何樽も買い込んで家に戻ってきた。そしてみんなで料理を作り始め、肉を煮たり、魚を焼いたりし、それに多くの酒を入れて、陽が西に沈む前においしい料理がたくさん出来上がった。こうして家からかなりはなれたところでも、料理の美味そうな匂いが届いた。
|