夜になった。体の大きな蚊がこの家に向かう途中で、美味そうな匂いがするので、「うん?人間の匂いじゃないぞ?なんだこれは?でも、美味そうな何かだ!」と急いで村の西端の家へ向かった。すると家には人間の姿はなく、ただ部屋の机の上に美味そうな料理が並べてある。
「ふん!このわしから逃げられるものか。これまでわしから逃げられた人間は一人もいないのじゃ。それにしても、美味そうだな。そうだ。先にこれらのものを食ってから人間を食おう」
ここまで考えた蚊は、さっそく、料理をパクパク食べ始めた。
「うん、うまい。うまい。人間以外にもこんなに美味いものがあったとはな。しかし、なんか面白い味はするな。あれ?少し目が回ってきたぞ?どうしたんだ?」
ここまで考えた蚊は不意に頭がふらつき、そのうちに部屋が回るような気がしてとうとうその場に倒れてしまった。
この「ドサッ」という音を、実はこの家のじいさんとばあさん、息子とその妻、それに若い夫婦が庭の隅にある穴の中で聞いていた。そこで恐る恐る穴から出て家の中を見ると、体の大きな蚊は料理に混ざった多くの酒に酔っ払って倒れ、なんといびきをかき始めているではないか。
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