今度は、清の本「聊斎志異」から「空に帰った竜」です。
「空に帰った竜」(回天竜)
一匹の竜がどうしたことか、ある日、空からある村に落ちた。幸い人はこれを見ていなかったらしく、騒ぎは起きなかった。もちろん、地面に叩きつけられたのだから、かなり痛かったらしく、ミミズのように這い出し、そのうちにある金持ちの屋敷に這い着いた。しかし、この屋敷の玄関は狭かったので、中に入るのに苦労した。こうしてやっとのことで入ったところ、屋敷の下男が竜を見つけて腰を抜かしそうになり、さっそく主や屋敷の人々に告げたので、みんなはびっくりして屋敷を逃げ出した。もちろん屋敷の主は、その足で役所に駆け込み、このことを告げた。これを聞いた役人、相手が竜だというので、大筒やほかの飛び道具を持ち出して下役人たちと共に、屋敷を囲み、その庭に弾を打ち込ませた。これに驚いた竜は、痛い体を引きずりやっとのことで屋根に這い上がったところ、近くに池があるのを見つけ、力を振り絞って一飛びし、何とかその池に移った。そして竜のしぐさがとても早かったので、屋敷を囲んでいた役人にはそれが見えなかった。
こちら竜、何とか池に移ったものの、その池はかかなり浅く、池の中でひっくり返ったりしたものだから、泥だらけ。しかし体中が痛むので、そのままじっとしていた。
こちら役人たちは、大筒や飛び道具を使って竜を脅かしたあと、屋敷の庭に恐る恐る入って見たところ、竜の姿がないので、首をかしげて役所にかえっていった。
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