これに湯聘は泣きそうになった。そのとき、観音さまの横に座っていたひげの長い菩薩さまが、観音さまにいった。
「どうでございましょう。土を肉とし、柳の枝を骨とし、かの宝の水を加えて、この者を包めばよいのでは?」
これに観音さまはしばらく考えていたが、「では、そうしましょう」といい、弟子である童子に、池のほとりの土と柳の枝を持ってこさせ、宝の水を加えて混ぜ、湯聘のからだを包ませ、湯聘を人間世界にある棺桶に送るよう命じた。
こうして湯聘は、自分の屋敷の霊堂に置かれていた棺桶の中に戻った。
さて、湯聘の家では、主の湯聘が亡くなったので棺桶の周りで家族などが泣いていた。この泣き声を聞いて息を吹き返した湯聘は、中から棺桶の蓋を叩いた。これに家族や屋敷のものはびっくり。中には悲鳴を上げて逃げ出す下女までいた。
しかし、この音を聞いた妻と息子や娘たちは、まさか!もしかしたら!と涙を拭き、棺桶の蓋を開けた。すると湯聘が元気そうに出て来たはないか。もちろん後のことは言わなくてもわかる。が、この日は湯聘がなくなってから七日目だったという。
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