「ええ。王大。お前はどこにいるんだ?」
「もう、あんたはわしの姿を見ることは出来んよ」
「どうして?」
「どうでもいいから、わしに付いてきてくれ」
蔡四は仕方がないのでお化けの声のするほうに歩いていった。そしてしばらく行くと、丘の下の墓場に来たので、蔡四は気味悪がったが、それを察したかのようにお化けの声がする。
「蔡さん、怖がることないよ。誰も恐ろしい顔して出てきたりはしないから」
「私にどうしろというんだ?こんなところにつれてきて?!」
「前に大きめの墓があるだろう。あれがわしの墓だ。蔡さん。これまで一人前に付き合ってくれてありがろう。迷惑かけたな。この恩はきっと返すからな。じゃあ、これでさらばだ!」
お化けの王大の声はここで消えてしまった。そこで蔡四はいくらか緊張し、その大き目の墓の前に行くと、墓石には「王大之墓」とあった。それに墓の前には王大がこの前貸したお椀や箸などが積んであり、その横に銭型に切った紙がたくさんあり、火打石まであった。
「そうか。そういうことだったのか」と蔡四はうなずき、この友達とも言えたお化けのために、紙に火をつけ、これらのものを墓の前で全部燃やし、「成仏してくれよ。王大」とつぶやいてから手を合わせ、しばらくして帰っていった、
このときから、お化けの王大は蔡四の前に出ることはなかったが、どうしてことか、その後、蔡四はやることなすことがすべてうまく行き、それに九十近くまで達者で生きたという。
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